■ こよみアナライズ ■




 突き詰めて考えれば、最近とんでもなく金欠で、なかなかミスドに行けなかった僕がまあ、悪いのだろう。
 しかし僕には彼女がいるのである。阿良々木暦には、戦場ヶ原ひたぎと言うステキな彼女がいるのである!
 友達がいなかったかつての僕ならいざ知らず、お金の使い道が今までと変わってくるのは仕方のない事である。つまりどうしたってドーナツ資金のねん出には無理が生じてくるのだ。
「そういうあるじ様の気持ちはまあ、儂も最大限汲みあげたつもりじゃ」
「……そいつはどうもありがとうよ、忍」
「しかしもう二週間もミスドに連れて行ってもらえなかったのじゃ。いくら燃費の良い儂でも腹が減るのは仕方ない事じゃろう?」
「だからってお前……これは吸い過ぎ……!」
 床に仰向けに倒れこんでいる僕を、金色の瞳の少女が仁王立ちで見下ろしている。忍野忍という名前を与えられた、正真正銘の怪異であり吸血鬼の搾りかすである。本当の名前を僕はもう呼ぶ事が出来ない。僕に出来るのは、血を与えて彼女を生かし続ける事だけなのだけど。ちなみにどのくらい怪異なのかと言えば、畳からにょっきり生えた荒縄に僕の胴体が大の字で拘束される位。彼女が怪異パワーで作り出したそれは、いくらもがいても全く外れそうな気配がなかった。
 しかし、今日はまた一段と激しく吸い上げられた。普段は八歳幼女の筈なのに、今の彼女はどう見ても女子中学生ほどまで成長している。うちの二人の姦しい妹どもと同じくらいの年格好だった。まあ格好が似通っているだけで、見た目その物はもうレベルが違うと言い切れた。
 染めた物ではない、正真正銘天然物の金髪である。腰まで伸びているそれが、中にLEDでも仕込んでいるんじゃないかってくらい鮮やかに輝いている。肌は抜けるように白くて、染み一つありはしない。手も足も僕より長いんじゃないかってくらいすらりと伸びていて、きゅっとくびれた腰の位置にはもう感嘆のため息しかでてきやしない。
 いやそんな事はいい。こいつが冗談みたいに綺麗なのは出会った時から分かっていた事だ。
「とりあえず、だ忍」
「何かの、あるじ様よ?」
 血を吸われた後の倦怠感で力の入らない右手をよろよろと持ち上げて、僕は忍に向かって突きつける。
「何でお前は今スクール水着なのか、僕が納得できるように説明してみやがれ!」
 しかも白だった。そのうえ旧スクだった。
 ご丁寧に胸元には「おしのしのぶ」と平仮名で名札までつけている。
 当然だがここはプールでも海でもない。ついでにいえば僕の部屋でもない。大切で物騒な彼女である所の戦場ヶ原ひたぎさんのお宅である。
 和室のちゃぶ台の上で仁王立ちの白スク水金髪少女。
 なんだこれ。絵面がシュールすぎて目眩がしてくるぞ。
 しかし僕の当然の突っ込みにも忍は表情一つ変えず、
「だってあるじ様スク水好きじゃろ?」
「僕の好みに何でお前が応えるんだよ!
「好きなのを否定はしないんじゃな……」
 眉をひそめた忍は、軽くちゃぶ台を蹴って飛び降りる。
 僕の腹の上へと。馬乗りに。割と勢いよく。
「ごふっ!?」
「ほれほれ。お前様の好みの格好をした金髪女子中学生が今腹の上じゃぞ? もう少し喜ばんか?」
「な、何が中学生だこの実年齢六百歳めごぶっ!?」
 真実の訴えはストンピングで潰された。
「おま、げふ、このっ! 中身が出たらどうするんだ!」
「女子の歳を不要に詮索する輩は、少し位中身を吐き出して入れ替えてやった方がよかろう?」
「入れ替えるな! 人間の体にそんな機能はねえ!」
「まあそれはそれとして、あるじ様垂涎の白スク水じゃぞ? とりあえず褒めんか?」
「流すなよ。そして結局何で白スク水なんだよ。着てる理由の説明もなしかよ」
「何じゃ? お前様違う色の方が好みかの?」
「へ?」
 言う間もなかった。瞬きするよりも早く、忍の着ていたスクール水着の色が白から濃紺へと変わっていた。トラディショナルと言おうか、スタンダードと言おうか。いわゆる「スクール水着」と聞いて頭に思い浮かぶ物である。
 忍の持っている物質創造化というデタラメ能力の一端を、今まさに僕は目の当たりにしたわけだ。その結果がスク水とか全く持って有難くないんだけれどな。
「ほれ、こっちはどうじゃ?」
「いやどちらかと言うと白の方が」
「わがままなあるじ様じゃの……」
 あ、戻った。
 回数制限とか不可逆性とかないのな。本当にチート生物だな忍ってば。
「まあ、似合うのは確かだ。うん、良く似合っているぞ忍」
「ほほう! 言うではないか言うではないか。良いぞ、もっと褒めよ!」
 僕の言葉に何やら嬉しそうに忍は眼を細めている。
 実際、似合いすぎているのだからしょうがない。ぺったんこだった胸も今は適度に膨らんで、水着の生地を押し上げている。下から見ると中々に迫力のある光景である。もしかつての姿だったらさぞ絶景だったのだろうけれど、それは僕が口にする事は許されない。
「って、あれ?」
 なんだか先ほどとは違う気がする。
 さっきの白スク水に比べて、何だか赤みが差している感じと言うか、影が濃いというか。お腹のあたりとか盛り上がってる胸の先端とか、なんだか不必要にその造形が強調されている気がする。。
「……おい、忍。何かその水着、その、なんだ」
「サービスで生地の厚みを半分にしてみた」
「いらんわそんなサービスっ!」
 やっぱりかよ! 何やってるんだよこの痴女吸血鬼!
「あるじ様に褒められたからな、儂としてもサービスをしてやらねばと」
「そう思うならまずは僕の体の上からどけ。まずはそれからだ」
 マウントポジションが圧倒的に優位って本当なんだな。いつの間にか腹を拘束していた縄は消えていたのだが、いくら血を多めに抜かれたといっても忍の体を撥ね退けられないとは。
 と言うか、この態勢はまずいのである。ものすごく僕の命にかかわってくる。
 何せここは戦場ヶ原の家である。家主は今シャワーを浴びているのだが、いつ戻ってくるかしれたものではない。
 色々あって忍の存在は彼女も認めているのだが、だからと言って女子中学生サイズになれる事や、白スク水で彼氏の腹の上に馬乗りなんて状況を笑って許してもらえるとは思えない。
「だってどいたら逃げるじゃろ?」
「逃がしてくれよ! 何で拘束したがるんだよ!」
 真顔で口を尖らせる忍に叫び返したが、肩を竦めて深いため息をついてきやがった。
「そもそもあるじ様が悪いのじゃ」
「何故に!? 僕が一体お前に何をしたんだよ!」
「色々したと思うがまあそれは良いわ。儂が腹を立てているのはそこではない」
 そう言って忍は半眼で、僕に向かって顔を寄せてくる。
 息がかかるほど近い距離で、忍が僕を見つめている。
 やっべえ、こいつ本当に綺麗だよな。こんな近い距離で見ても、探せる荒がありゃしない。
「儂がいて、そしてあるじ様自身が公言する彼女がいる。なのになぜお前様は女子中学生に一番興奮するのじゃ?」
 そんな距離で投げつけられた爆弾に、僕は一瞬言葉を失い。
「待て待て待て待て!? 何を言い出してるんだお前は」
「隠し通せると思うてか? 儂とお前様の感覚は繋がっておる。朝勃ちから始まって後輩の蛇娘どころか妹の風呂上がりに反応する所までばっちり伝わっておるわ!」
 忍さんの衝撃的すぎる暴露に、血の気の引く音がはっきり聞こえたわけなんですが。
 え、するとひょっとして時折我慢できずに自分でしちゃってたりするのまで忍には筒抜けなんでしょうか? いやいやそんなまさかまさか。
「気持ちは分かるが、とりあえず「ガハラさんガハラさん」と連呼しながらするのはちょっと引くぞ?」
「僕のプライバシーを今すぐ返せ!」
「儂も正直覗きみたいで気が引けるのじゃが」
「みたいどころかそのものじゃねえか!」
「しかし、上の妹の歯を磨いてやった後に「火憐ちゃん火憐ちゃん」と呟きながらやっていたのは、その、何と言うかな。人としてどうよ? せめて儂にしておけよあるじ様よ」
「もういっそ殺してくれーっ!」
 あれを聞かれたとか! あれを知られたとか!
 あの時はもう本当に歯磨きの魔力と言うか気の迷いと言うか、後で我に返って首を括りたくなる位自己嫌悪に陥っていたのだ。それを忍に知られているとか、もう僕本当に死んだ方が良いんじゃなかろうか。
「とにかく、儂としてはあるじ様が女子中学生を好きすぎるという性癖を看過出来ぬ。妹にまで負けるのは女として儂の沽券にかかわるゆえな」
「ひどい偏見だ! 大体僕にはガハラさんという大事な彼女がいるんだから、妹の裸になんか興奮しない!」
「あら、嬉しい事を言ってくれるじゃない」
 聞こえちゃいけない声が聞こえた気がした。
 聞かなかった事にしたかったけど、そうしてしまうと何だかもっとひどい事になる気がしてならない。
 強張った首を無理やり回して、声のする方向に顔を向ける。
 果たしてそこには、僕の彼女である戦場ヶ原ひたぎさんが仁王立ちだった。
 素っ裸で。
 風呂上がりの水滴を滴らせながら。
「何でだよ!」
「服を持って入るのが面倒だったんだもの。お父さんはどうせ今日帰ってこないし、今更阿良々木くんに見られても何の問題もないでしょう?」
「あるよ! 困るよ! 主に目のやり場に!」
 恥じらいなんぞ蟹に喰わせたと言わんばかりの雄々しさで、戦場ヶ原は僕を見下ろしている。切ってしまったのが勿体なく思える黒髪が、水を吸って頬や首筋にまとわりついているのがむやみやたらと艶めかしい。つんと張り出した乳房やすらりと伸びた長い脚のその付け根の翳りまで、しっかりと僕の眼に映ってしまっている。彼女とは言え女の子の裸を見つめてしまう気恥しさと、美しすぎるその肢体に目が吸い寄せられる男の本能が、僕の中でまぜこぜになってしまって顔を反らす事が出来ない。
「そんなもの、これから困る暇もなくなるわよ阿良々木くん」
 しかしそんな僕の視線など一切構う様子もなく、戦場ヶ原は隣に膝をつくと、相変わらず馬乗りになったままの忍と何やら頷きあう。
「それじゃあ忍さん、打ち合わせ通りに」
「うむ、腕が鳴るのう」
「あのー……お二人さんがた、何を?」
 さっぱり話が見えません。
 僕は一体これからどんな目に合わされるんでしょうか?
「それじゃあ阿良々木くん」
 にっこりと、戦場ヶ原は笑う。
 今まで見た事のない、おひさまのような笑顔だった。まっぱなのに。
「女子中学生が大好きすぎるというあなたの困った性癖について、相談をしましょうか」
 …………うわあい。
 何だか僕のいろんな物が、これから終わりを告げる模様です。






「では第一回、阿良々木くんの性癖調査改善委員会を始めたいと思います」
「いぇーい! どんどんひゅーひゅーぱふぱふー!」
「贅沢言わないから帰してくれ。頼むから」
 僕の向かいで戦場ヶ原が神妙な顔でそう言った。合いの手を入れたのは忍である。最近、この吸血鬼実は馬鹿なんじゃないだろうかという疑惑を抱いていたのだが、何かもう確信に変わりつつある。
 そして僕はと言えば。
 部屋の真ん中の柱に両手を後ろ手にくくられ胡坐で座らされ、そんな二人を見上げている状態だった。ちなみに戦場ヶ原ハウスにはこんな場所に本来柱は無い。忍は吸血鬼パワーを安売りしすぎだと思う。
「とりあえず何から何まで突っ込みたいんだが、お二人様一体何を始める気なんでしょうか?」
「分析と矯正よ」
「まずはあるじ様の性癖をギリギリのラインまで見極めて、そして女子中学生妹最萌えラインから別の方向に持っていこうとな」
「お前ら絶対心の底から馬鹿だろう!」
「失礼ね。これは彼女として当然の処置だと思わない?」
 心の底から突っ込んだ僕の目の前に、ぬっと戦場ヶ原が顔を寄せて来る。ちなみに今はまっぱでは無い。バスタオル一枚だ。変わんないと言うか、逆に体のラインがこれでもかと強調されてかなりクるものがあるんだが。
 ついでに言うと、僕の格好も少し変わっている。具体的に言うと、ズボンだけ脱がされた。パンツ一丁で胡坐をかいて柱にくくられているのである。何かの苛めかよこれは。
「ねえ、私は阿良々木くんの彼女よね?」
「当然だろ」
 唐突な戦場ヶ原の問いかけに即答した。迷う必要のなかった事だし、迷ったらこの後が怖すぎる。
「性質の悪いメンヘラ処女だった私は、獣のような阿良々木くんの獣欲に嬲られ啼かされ貪られて、メンヘラ淫女に変えてもらったのよね。流石よね、阿良々木くん。女の堕とし方調教方法(しつけかた)を心得てるわ」
「心得てねえし嬲っても貪ってもねえよ!」
「啼かせたのは否定しないのじゃな。まあ、最初からあれだけ激しければのう」
「後ろから余計な突っ込みいれるなエロ吸血鬼!」
 何なんだこの拷問は。
 もう消えて無くなりたい。
「とにかく、私としても阿良々木くんの彼女であるプライドというものがあるの。あなたの興奮対象が実の妹二人だとか、絶対に許せる状態では無いわ」
「だからそれは酷い誤解だと僕は声を大にしていうぞ!」
「ウキウキしながら妹の歯を磨くための歯ブラシを選んでおいて何を今更」
「お願いですのでもうこれ以上僕のプライベートをガハラさんにぶちまけるの勘弁してください」
 そろそろ臓物をぶちまける事になりそうです。
「大丈夫よ。それはもう忍さんから聞いているから」
 戦場ヶ原はそう言って、にっこりと笑うと立ち上がった。
「そ、そうか。でも多分お互いの問題に対する認識にズレが生じてると思う……」
「それを聞いて、矯正しなきゃって心に誓ったんだもの」
「はうっ!?」
 踏まれた。
 しなやかで細く引き締まった戦場ヶ原の足が伸びてきて、僕を踏みつけた。もうちょっと具体的にいうと股間の辺りをぐいっと。
「はぐっ! が、ガハラさ……何をっ!」
 もう少しで耐えられなくなる痛みの一歩手前。絶妙な力加減で戦場ヶ原の足が僕の大事な所を弄んでくる。薄いトランクスの生地一枚ごしに、戦場ヶ原の温もりが痛い!
「はーい、阿良々木くんこっちに注目ー」
 そして戦場ヶ原は勢いよくバスタオルを取り払った。
 再び真っ裸である。
 高さ的にちょうど、僕の目の前に戦場ヶ原の足の付け根がその奥が!
「な、な、ななななな何をガハラさんっ!?」
「あれ、おかしいわね。全然反応しないじゃない。ふにゃふにゃのままよ」
「そうじゃな、あるじ様の興奮が儂に流れ込んでこぬ」
「出来るかーっ!? 男の純情なめるなーっ!」
 こんな開けっぴろげにされて勃つ訳がないだろう!
 いくらとびっきりに綺麗な女の子の裸が目の前にあったって、隣で忍がガン見して、当の本人に踏まれながら反応しろと言われても出来るわけがない。
「そう。やっぱり阿良々木くんは貪りつくした女の裸なんかもう興味ないという事なのね」
「興味津々だけどやり方が悪過ぎるんだって言ってるんだよ! とりあえず足をどけて忍もどかしてもう少し恥らってくれればいくらでも反応するわっ!」
「憎いわ。このまま踏み潰してやりたい」
「逆恨み過ぎるわっ!」
 どうしよう、相変わらず僕の彼女は人の話を聞きやしない。
「まあ、今そこで踏み潰してはこの先の調査も出来ぬじゃろ?」
「そうね、それじゃ忍さんお願いするわ」
「うむ」
 戦場ヶ原の言葉に頷いた忍は立ち上がると、彼女の腰の辺りに軽く手を触れさせる。
「うぉ……」
 思わず声が漏れる。
 一瞬で、戦場ヶ原の姿が変わった。
 白い体操服と、腰から太ももの付け根までをぴったりと包みこむ濃紺のブルマに。
「とりあえず、私が中学校時代に着ていたのと同じ物なんだけど」
「それはいいからとりあえず足をどけろ」
「どけたら判らないじゃない」
 当然の欲求はあっさり切り捨てられた。横暴にも程がある。痛い。
 しかしそれにしても、つい数秒前まで素裸だった腰や尻や股間をこの紺の生地が包んでいる。ショートパンツとは違う、ぴったりと体に張り付いて浮かび上がらせる戦場ヶ原の体のラインの美しさはこんな状況でも思わず目が吸い寄せられてしまう。
「ちなみにパンツは具現化してないから、ノーパンに生ブルマじゃぞあるじ様」
「いらん情報だ!」
「あら、反応してきたわね」
「う……」
 何だか嬉しそうな戦場ヶ原の声に、思わず顔が熱くなる。
「男の純情舐めるなー! とかついさっき言ってた気がするけれど。阿良々木くんは裸より素肌ブルマに興奮する変態なのね」
「いやこれは、ていうかガハラさんの足が……」
「私の足がどうしたのかしら?」
 ぐりぐりと押さえつけていた筈の戦場ヶ原の脚の動きが、微妙に変わってきている。優しく撫でさするように、上から下へと擦りつけてくる。普段手でしてくる事を、足で代わってしているような。
「正常に反応しているようで何よりじゃな。とりあえずその格好は中々にあるじ様の中でポイントが高そうじゃ」
「だから忍も変な感心してないでとりあえず……」
 ガハラさんを説得しろ。
 そう言いかけた僕のあごが外れそうになった。
 忍も体操服にブルマだった。
 考えてみて欲しい。AVでよくあるような年増洋ピンではない、掛け値無しの金髪女子中学生美少女が体操服にブルマである。
 多分今の僕以外の日本の高校生で、こんなレアキャラみた事ある奴はいないだろう。
「って。あ」
 気がつけば、僕は完全に反応しきっていた。
「…………そう。私より、忍さんなのね」
「あるじ様よ……そこは彼女で勃てておけよ……」
「…………ごめんなさい」
 当然僕の言葉が通じるわけもなく、そのまま思い切り踏みつけられた。
 人間、本当に痛い時は悲鳴も出てこないのである。
 正直神原に腹ぶち抜かれたのと同じくらい痛かった。



「結局今の所、一番反応したのが忍さんの体操服にブルマなんだけど」
「結局あるじ様は中学生の姿格好が一番という事なのかのう」
「磨りつぶしてやりたいわ」
「いくら治るとはいえ、流石に勘弁してやってくれんか。というか、あるじ様の痛みが儂にもフィードバックされるので勘弁して欲しいぞ」
 燃え尽きている僕の前で、戦場ヶ原と忍がそんな事を話している。
 あれからメイド、シスター、巫女、フライトアテンダント、婦警、OLときて今はバニーさんだった。戦場ヶ原が黒バニーさん。忍が白バニーさん。ああよく似合っているなぁ。おっぱいの谷間も網タイツ越しの尻のラインも最高だ。
 色々いじめられ過ぎて、今は全く反応しませんが。
「というわけで、阿良々木くんの申し開きを聞きたいんだけど」
「これだけさんざん僕をもてあそんでおいて、更に謝罪まで要求するのかお前は」
「だって結局私より中学生姿の忍さん、ひいては妹さんたちに反応してしまうという事なのでしょう?」
「だから! 普通の格好で普通に迫ってくれれば普通に反応するっての!」
「悲しみに泣き濡れた私は阿良々木くんを殺して逃げるわ」
「せめて一緒に死なないのかよ!」
 おかしいなあ。
 僕の彼女は最近更生したと思っていたんだけどなあ。
「まああるじ様に死なれると儂はかつての姿を取り戻すらしいのじゃが」
 僕を挟んで反対側で、うつ伏せで頬杖をつきながら忍は言う。
「って、こら! 突くな!」
「いやほら、ちゃんと治っているのかとな。今は元気無いようじゃが、この先も完全に反応しなくなったら困るじゃろう?」
「忍さん、それは一体どういう事?」
 僕の股間をもてあそぶ忍に向かって、戦場ヶ原は小首を傾げた。
「どういうも何も、うぬ自身があれほどまでに弄んでおいて何を今更ぬかしおるか」
「いえそこじゃなくて。「かつての姿」の部分なんだけど」
「おや、話しておらんかったか?」
 そう言えば、忍と何があったかはちゃんと話したけど、どう言う姿だったのかまでは話してなかった気がするな。
「とはいっても、儂は鏡に映らんので自分で上手い説明は出来んのじゃが」
「さあ阿良々木くん、きりきり話しなさい」
「何でそこで目を輝かせてるんだお前は……」
 とは言っても、別に説明を拒む理由は無いわけで。
「とりあえず身長はお前や火憐ちゃんより高くて、腰の位置もパなかった。外見はまあ言わずもがななんだけど、綺麗とか可愛いとかじゃなくて、美しいって言葉しか出てこない。多分ガハラさんが見てもそう言うぞ。それにこんなトンチキな恰好じゃなくて、赤い古風なドレスに身を包んでてさ、そのまんまヨーロッパの古いお城の肖像画に掛かってても不思議じゃない似合いっぷり。ああ、ルーブルとかで真剣に探せば、ひょっとしたら描かれてたりしてな」
「ふむふむふむふむ」
「やあ、改めて言われると照れるのう。良いぞ、あるじ様よもっと語るが良い!」
「後はもう、とにかくおっぱいが凄かった。圧倒的だった。羽川も勝てないおっぱいぶり。ちょっとスキップするだけでぼよんぼよんとかたゆんたゆんとか音が聞こえるんじゃないかってくらいおっぱい……」
 言い終える間もなかった。
 忍の肩に、戦場ヶ原の手が勢い良く置かれた。
「む?」
「戻ってちょうだい」
「いやちょっと待てガハラさん」
「あのな、ひたぎよ。儂が戻るという事はつまりあるじ様が死ぬという事なのじゃが」
「そんなおっぱいを阿良々木君だけが見たなんてずるいわ。私にも見せなさい」
 本気と書いてマジだった。
 戦場ヶ原が、今にも押し倒しそうなほど血走ったな眼差しで忍を見つめている。
「いやいやいやいや、落ちつけよひたぎよ! ずるいとかずるくないとかであるじ様の命を左右するのは儂もちょっと躊躇うぞ!」
「ちょっとじゃなくて大いに躊躇え!」
「大丈夫よ、阿良々木くんだもの。ちょっと全身の血を抜かれつくしたくらいで死ぬような男じゃないわ」
「死ぬから! 人間じゃなくなるから! それ春休みの焼き直しだっつーのっ!」
 こちらの叫びを右から左へ聞き流して、戦場ヶ原が僕の首に手を当ててぐぐっと忍にさしだそうとする。
 ってか痛い痛い痛い痛い! 折れるから! そっちに人間の首は曲がらないっての!
「さあ、私が許すわ! 思う存分吸い上げて!」
「……どうしたものかのあるじ様よ」
「とりあえずこの拘束を解いて助けてくれ痛い痛い痛い曲がる折れるネジ切れる!」
「ああもう我慢できないわ。この際膨らみかけでも」
「へ? いや、ひぁん!?」
 荒ぶる戦場ヶ原はもはや我慢できなくなったらしい。僕の首を解放すると、そのまま忍に向かって飛びかかっていった。
「ちょ、ま、ヘルプ! ヘルプ! 助けよあるじ様よ!」
「大丈夫大丈夫。見るだけ剥くだけちょっと触って楽しむだけだから」
「あー、うん。無理。ほら拘束されてるから。頑張れ忍」

 そんなわけで、僕は黒い方の気がすむまで、二匹のバニーさんのあられもない絡み合いを至近距離で見続ける事と相成ったのだった。
 まあ、こう、あんまり反応できる状態じゃなかったのは良かったのかもしれない。
 何この生殺し。ていうかもう僕の性癖とか関係ないよねこれ。
 





「阿良々木くん。お話があります」
「な、なんでしょうか羽川」
「何だか最近、隙あらば戦場ヶ原さんが私のおっぱいを揉もうとしてくるんだけど、何か心当たりあるかな?」
「それをなぜ僕に聞くのか、羽川に問い詰めたいぞ」
「「これより大きいとか、信じられないわ……」とか呟いていたんだもの。きっと女子中学生が好きな阿良々木くんの性癖の話題から昔の忍ちゃんに繋がったんだと思うから、つまりは阿良々木くんが原因だよね?」
「もうその恐ろしすぎる洞察力を僕に向けるのを勘弁して下さい……」
 とにもかくにも、僕の周りの女性陣の探究心を止める方法を切実に募集しております。
 誰か助けて。


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