4.コンポルブルス
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「あれ……!?」
 目が醒めた、最初に気づいたのは自分はベットから落ちて凄い体勢で寝転がっているいることだった。
「うう、さぶっ……」
 しかも何故か裸だ、身体は芯から冷えて纏わりつくような寒気にカチカチと震えている。
 止まらない二日酔いのような頭痛と震えはどう見ても風邪だった。
 もう季節は冬の趣を濃くしている、こんな格好で床に転がっていればそりゃあ風邪の一つもひくだろう。
「って、おいっ……ひょっとして夢オチか!?」
 おいおいそれはないだろうと、セリフツッコミを入れようとしたところで背後から肩を叩かれた。
「ひっ!?」
 寒気と震えが一層に強くなる、ひょっとしてこれは風邪のせいではなく……
「さぁ草十郎、どっちがよかったか選んで頂戴」
 ゆっくりと振り向く。
「勿論、私だよな?」
 そこには黒い革のボンテージに身を包んだ青子と橙子が、鬼のような形相で立っていた。
「ふっ、ふたりとも凄くかわいかたーよ……」
 なんとか喉からそれだけ搾り出す。
 だが似たもの同士のこの姉妹は、それだけで許してくれるはずもない。
「やだなぁ草十郎、それじゃあどっちがよかったかわからないでしょ?」
 そう言う青子の頭にはうっすら青筋が浮かんでいる、その手には見るからに凶悪な荒縄が握られていた。
「しょうがないな、じゃあもう一度さっきの礼を兼ねてたっぷりと選んでもらおうか」
「そうね姉貴、えっと亀甲縛りってどうやるんだっけ?」
 赤い玉がでるまでな、と薄く微笑む橙子と。
 一度木馬とか鋸とかも使ってみたかったのよね、と嘯く青子。
「ひっ、ひぃっ!?」
 なまじ笑顔なだけでどうしようもなく怖い、もう漏らしそうなくらい。
「有珠、いるんだろ!? 助けて、ヘルプミー!!」
「ごめん、草十郎。わたしの為に死んで!」
「ガッデム!! くそっ、青子のためなら死ねる!! な女に頼んだのが間違いか」
 俺の心中はっきりいってドドメ色、お先真っ暗で希望なんか欠片もない。
 せっかくバカエロからラブラブっぽくなれたのに、最後はギャグでおわりらしい。
「そう言えばかなり意地悪してくれたよねー、縛ったりとか……ふふふ」
 ふふふ、ってちょっと目が据わってるぞ、青子。
「だってさ、あれは有珠の薬のせい……」
「あら? わたしの薬の効き目なんて、とっくに切れてたわよ」
「えっ!?」
 ――――じゃあなにか? 縛ったりとか、足を舐めたりとか、あまつさえ最後の言葉は俺の本心から……
「それじゃあ姉貴」
「ああ、はじめるか青子」
 どうやら物を考えることの出来る事の出来る時間はこれまでらしい。
 仲の悪い姉妹は、ものすごく息の合った動きで俺の虐待に乗り出したのだ。
 にやにやと嗜虐的な笑みを浮かべながら歩み寄ってくる二人を、俺はただ豚のような悲鳴をあげながら見ていることしかできなかった。
「ひぎぃ」
 ――――楽しい夢はこれで終わり、残ったのはどうしようもなく悲しい現実だけだったと言う話である。















「まあ、それもいっか……」
 誰にも聞こえないように呟く、夢は終わってもまだまだ宴は終わらないのだ。
 悲しい現実しかなくったって、きっと俺は笑って日々を過ごしていけると思う。
 何故かって? それはたった一つのシンプルな答えだ。
 なんでこんな簡単なことに気づかなかったのか、自分の馬鹿さ加減に恐れ入る。

 ――――俺はとっくの昔に青子にイカレってしまっていて。
 ――――大好きな青子と一緒にいられれば、俺は結局のところ他の事はどうだっていいらしい。


 
 





                    −Fin−




あとがき



 特に書くほどのことではありませんが、この作品は某スレで欠片でも取り上げて貰うために、蒼崎タナトスを読みたい!! と言う
 517の魂の叫びをエロエロエッサイムして合体事故したあげく、まほよ丼と言う形で結実した作品です。
 正直自分としてはこれまで書いたエロは半端なものが多く、一度自分の嗜好とは完璧に乖離したものを書いてみたいとも思っていたので、丁度良い機会だと筆を取らせて頂いた次第であります。
 抜けねぇぞゴラァとかの御叱りもあるとは思いますが、何分拙作でありますのでなにとぞご勘弁ご容赦のほどを。

 ちなみに幕間タイトルは、花言葉で以下のようになっております。
 アキレア(恋の戦い)
 ナルキッスス(利己愛)
 アイスランドポピー(忘却)
 コンポルブルス(絆)

 アイスランドポピーは芥子の花の別名で、タナトスの兄弟ピュプノスが人に眠りを齎すときに振りまく花だそうです。
 テーマがまほよでタナトスの花でしたので、安易に眠りと花に走ってみました。
 最初は今夜はとにかく陵辱が見たい、な意見に従って橙子に拘束された青子を操られた草十郎が無理やりエチーな流れだったのですが、どうも自分が嫌悪するものは筆の進みが悪く挫折。
 紆余曲折を経て、さんざ迷走してこんな形に相成りました。

 それではこのような拙作を受け取っていただきましたMAR様と、此処まで読んでいただいた全ての方に感謝を、またどこかで会えることを心よりお待ち申し上げております。




/  Jinroさんが「蒼崎タナトスっていいよなぁ」というのを耳にした時、よもやこれほどのものが届くとは予想だにせず。
 嬉しい悲鳴と共に(*´д`*)ハァハァさせていただきました。
 個人的には有栖×青子の場面が萌え;y=ー( ゚д゚)・∵. ターン
 
 Jirnoさん、ありがとうございましたー