凍てつく焔


作 Jinro






「ふふ、よっぽど溜まっていたんだな。ほら……こんなに出たぞ?」
 氷室はそう言って眼鏡をはずし、表面にこびり付いた俺の精液をねっとりと舐め取っていく。
 まるで俺に見せ付けるようにゆっくりと、少しも残さないように執拗に。
 透明なレンズの上を、軟体動物のように赤い舌が滑っていく。
 白い肌は上気してほんのり赤く染まっており、見られている事を意識してかその顔には淫靡な微笑を浮かべている。
 その姿から目が離せなくない、色素の薄い髪と怜悧な美貌肌蹴た制服とブラが堪らなく俺の獣欲を刺激する。
 陸上で引き締まった体はいっそへし折ってしまいたくなるほど華奢で、その癖十分に女性としてのまろみを備えている。
 体中がまるで夢の中にいるように胡乱で、現実感がない。
 何もかもが朱色に染まる放課後の教室で、ついさきほどまで氷室はグロテスクな俺のモノに愛おしげに舌を這わせていたのだ。
 普段のクールさからは想像もできない、まるで貪るように情熱的な奉仕、こんな氷室の姿は俺しか知らないのだと言うことを考えた瞬間に背骨の中を黒い虫の群れが駆け抜けていった。
 亀頭をしゃぶる懸命なその仕草も。
 痛くしないようにと恐々と袋を探るその優しさも。
 白い汚濁を飲み込む時の苦しそうでいながら切なげな瞳も。
 ――――全て、全て俺だけのもの。
 ぴちゃぴちゃと言う水音で、一瞬の夢から引き戻される。
 いつしか眼鏡を舐め取る氷室の息も、熱く熱を帯び始めていた、一生懸命に、一滴も残すまいとするかのように、薄いグラスを銀のフレームに丹念に丹念に舌を這わせていく。
 赤い赤い舌が上へ下へと踊るたび、ピクンと俺の下半身が反応する。
 ああやってしゃぶられていたのだと思うと、どうしようもなく胸の奥が暑くなる。
 人間が理性の動物などとは笑える話だ、だってこんなにも俺達は本能に急かされている。
 いや、それは間違いだったか。
 俺が急かされているのは肉欲で、溺れているのは他でもない……
「氷室……」
 俺の言葉に潤んだ目で眼鏡を舐めていた氷室がゆっくりと顔を上げた。
 上気した肌も真っ赤な耳も、潤んだ瞳も、色素の薄い長い髪も、全て全て夕焼けの朱に染まっている。
 ふと夢想する。夕焼けに身を染めた氷室はまるで、炎を内に孕む混じりけのない氷のようだ。どこまでも純粋なくせに触れれば蕩けそうな程に熱く熱く燻っている。
 ではそれにずっと触れ続ければ果たして炎に包まれて燃え上がるのだろうか? それとも冷え切って凍りつくのだろうか?
 そんなくだらない事を、朱に酔った頭で考える。
「……ぁ、なんだ衛宮?」
 放課後の教室、夕陽だけが照らすこの場所で氷室は顔に白いものをへばりつかせて一見するといつもと変わらないような平静な顔で俺の事を見ている。
 いくら放課後と言っても誰か来るかもしれないのに、酷く落ち着いていてきっとこのまま朝のホームルームにさえ出て行けそうに見える。
 けれどその内には隠しようのない情欲が燃えていて、恥ずかしさや期待やきっと俺では分からないものがぐるぐると渦を巻いていて。
 ――――平気なように見えても全然平気なんかじゃない、ただの恋する女の子だ。
「ぁ、凄い。もう……」
 夢見るように、氷室が囁く。
 再び元気になった俺の下半身がちょこんと氷室の鼻先を突いていた。
「可愛い……」
 じっとそれを見詰めた後、氷室はそんな事を言ってくすりと笑う。
 そのままグロテスクなそれに躊躇う事無く頬ずりするとちゅっ、と口付けして再び口のなかに含んだ。
 氷室の口の中の温かさに思わず気が遠くなる。
「うっ、あっ……!」
「ろうら? ひもひいいふぁ?」
 口をすぼめての強烈な吸い上げと空いた手を使った袋へとマッサージ、体を交わすごとに今までよりも巧みにそして淫らになっていく。
 一度その事を指摘したら、衛宮のせいじゃないかと恥ずかしそうにくすりと笑ったっけ。
 なんでさ、と抗議したらゆっくりと唇を重ねられて、あとはそのままずるずると愛欲の日々。
 けどそれを言うのなら、俺がこんなになんてしまったのも氷室のせいだろう。
 元々衛宮士郎は女の子にこんな変態チックな事をお願いできるようには出来ていないのだ。
 氷室の声が、氷室の姿が、氷室の体が、俺をどんどん別のものにしていってしまう。
 変えてしまったのはどちらなのか、変わってしまったのはどちらなのか、わからない、わからない、わからない。
 ――――本当に、氷室はずるいと思う。
「ああ、凄く気持ちいいよ」
 生糸のような手触りの氷室の髪を手櫛で梳きながら、二度目のフェラチオを堪能する。
 いくら二度目で余裕があると言ってもそう長くはもちそうにない。
 なんと言っても氷室のテクニックが異常なのだ、一度何処でそんな技を覚えてくるのかと聞いたら、成年向けの雑誌を買って研究しているのだと言う。
 ――――曰く「衛宮が気持ち良くなってくれるのならどんな事でも私はしたいんだ」と。
 やっぱり、氷室はずるい。
 そんな顔されたら、俺なんて一溜りも無く頭の中をぐちゃぐちゃにされてしまうから。
「でも俺ばっか気持ちいいのはやっぱずるい」
 だからまだ理性が残っている間に、必死の反撃を試みる。
 懸命に奉仕を続ける氷室の口からモノを引き抜くと、そのままその場で体を屈めた。
「え、きゃ!?」
 可愛らしい声をあげる氷室に構わずに唐突に抱きしめる、そのまま無理やりに唇を奪う。
 柔らかな唇が何か言葉を紡ごうとするが、強引に自分の唇で押さえつけた。

 ――――あ、ふあぁ、じゅ、ちゅ、ふぁ、ぁ、んちゅ
 響く水音と喘ぎの吐息はどちらのものか、もう俺にもわからない。
 校庭からは遠く蒔寺が後輩を追い立てる叫び声が聞こる、それがまるで俺達の行為を咎めているようで酷くゾクゾクとする。
 僅かに口内に残る青臭さは間違いなく俺の精液だろう、気持ち悪いけど氷室の唇のほうが何倍も気持ちよくて帳消しもいいところ。
 最初は戸惑いがちだった氷室も、ゆっくりと積極的になってきて俺もそれに応える。
 ゆっくりとした動作で舌を絡め、ねっとりと応えてくる相手の舌を愛撫する。
 まるで軟体動物の交尾のように、深く深く繋がりあう。
 足りないのは酸素かそれとも血液か、酷く息苦しくまるで立ち眩みを起こしたときのように視界は白い。
 荒い息を付きながら、まるで獣のようにお互いを求め合う。
「っあ、はぁぁ、ぷはっ、はぁ、はぁ……」
「ああ、んあ、はぁ……」
 さすがに息が続かなくなって、どちらともなく俺達は唇を離し……
「ひでっ!?」
 くれなかった。
「ひ、ひむ゛ろ?」
 視線を下に落とすと、氷室が唇で俺の下唇を啄ばんでいる。
 まるで逃がさないとでも言うようにきつくきつく、その桃色の唇でち゛ゅうち゛ゅうと吸いながら挟み込んでいる。
 妖艶さのなかには最高の悪戯が綺麗に決まった子供のような無邪気さがあった。
「ん、あぁ……ふふ」
 さすがに息が続かなくなったのか、つるんと俺の唇が氷室の口から離れた。
 氷室は残念そうにそれを見ている。
 てらてらと光る唾液が橋となって淫らに余韻を残していた。
「氷室、もう我慢が……」
 まっすぐに氷室を見詰めながら俺は言った。
 限界だった、俺の半身は焦らされて焦らせて吐いてしまいそうなほど焦らされて、早く氷室と一つになりたいと涙を流しながら震えている。
 目前の熟れきった牝のなかに、突き刺してくれと懇願している。
 男などみんな下半身で生きているようなものである、その懇願を無視できよう筈が無い。 
 ――――けれど今日の氷室は、少しだけいつもより意地悪だった。
「実はやりたいことがあるんだ、だから……」
 驚く俺を他所に、そう言って氷室は俺の上に覆い被ってきた。
 体に心地よい重さを感じ、自分が押し倒されたのだと理解する。
「えっ……?」
 咄嗟のことに反応できない、気付けば顔には柔らかい何かが触れている。
 言うまでもなく、それは豊満なふたつの果実。
 紛う事無くそれは氷室のおっぱいだった。
 着やせするタイプなのである、脱いでみないとこの素晴らしい重量感は誰にも分からない。
 氷室はスレンダーなその体に、有得ないほどの凶器を隠し持っていたのだ。
 乳首を捏ね回すのも後ろから揉みしだくのも俺だけが出来るのだ、この綺麗なくせにたわわに実った果実は俺だけの俺だけの俺だけの……
「……始めるぞ」
「あ、ああ」
 意を決したような氷室の声で俺は現実に引き戻された、しかし始めるって何を……?
 その疑問はすぐに氷解する。
「ふぁっ!?」
 唐突にペニスに走る痛みとも快感ともとれない何か。
 むずがゆいようなその感触は矢継ぎ早に俺に襲い掛かってくる。
「あっ、ちょ氷室!?」
 反則だった、ごしゅごしゅと音が聞こえそうな様子で氷室の足が俺の下半身を行き来する。
 氷室は俺に跨ったままその黒いストッキングに包まれたしなやかな足を使って俺のモノを扱いているのだった。
「むぅ、なかなか巧くはいかないものだな」
 そう言いながら、しかし氷室は足の動きを止めようとはせず、胸を俺の顔に押し付けたまま足をくにくにと動かし続けている。
 どんな体位でされているのかはその豊満な胸のせいでよく分からなかったが、胸と腹のあたりにかかる氷室の体重は酷く心地良いものだった。
「あっ、うあ……」
「気持ちいいの、か? 衛宮」
 そんなの自分でもよく分からなかった。
 けれどだからこそ足でされているんだと言う事を余計に意識してしまって、不覚にも一際下半身に血が集まっていくのを自覚した。
「――――いい、んだな? よし、次は……」
 そうして氷室は次々に足の動きを変え、あの手この手で愛撫してくる。
 足でして貰っているのだと言う戸惑いと、それで気持ちよくなってしまっていると言う背徳感。
 だがそんな事よりも何よりも、不器用ながらも背一杯俺のことを悦ばせようと頑張ってくれているとその事実が、何よりも俺の心を熱くした。
 どうすればその献身に応えられるのか考えて、すぐ目の前に答えはあったのだと気が付く。
 ぱくりと、その桃色の果実を口に含んだ。
「あっ!? 衛宮……ぁ」
 甘い吐息が耳を擽る、そう言えば氷室と付き合い始めてから乳首を啄ばむのも大分巧くなった。
 綺麗なピンク色の尖った先端を口に含み、さくらんぼのようにころころと舌で転がす。
 ちゅっと吸って、固くなったところに再び舌を這わせる。優しく、そして時に乱暴に玩ぶ。
「氷室、足が止まってる」
 ――――俺はこんな意地悪な台詞を言うような人間だったっけ?

 それすらもうわからなくなる、目の前は二つの膨らみと潤み潤み潤みきって蕩けてしまいそうな氷室の顔。
 まるで炎に炙られて溶けてしまったアイスクリーム、口の端から零れた唾液と潤んだ瞳に吐きそうなくらいに欲情する。
 なんて浅ましいと思うが、どうしたってとめられるはずがない。
 慌てて再開した拙い足の動きが、酔ったように赤く火照った肌が、華奢でいながら引き締まったその体が、クールに見えて実は凄くロマンチストなところも色素の薄い生糸のような手触りの長い髪も時々口走る俺にはよく分からないセンスの冗談も。
 何もかもが愛しくて可愛らしくておかしくなる。
 ああ、そうだ。俺はとっくの昔に氷室にいかれてしまっている。
 結局は、ただそれだけの事だろう。
「氷室、もう出ちゃいそうだから……」
 そう言って、俺はもう一度氷室の体を優しく抱きとめた。
 汗の浮いた腰にブラウス越しに手を回して、ゆっくりとその体を抱き寄せる。
 ぎりぎりまで顔を寄せて、俺は言った。
「最後は、一緒にいこう」
 そう言って、氷室の体に手を伸ばす。
 夢を見るように肌を重ね……


 ――――ようとした瞬間、携帯の電子音が響き渡った。

「――――っ!?」
「誰だっ!?」
 俺達の声に続いて、がしゃんと金属が転がるような派手な音が響いた。









 床の上には差し込む夕日が三つの影を作っていた。
 一つ目は今もまだ揺れているバケツ、二つ目は今もまだ鳴り続けている白い携帯電話、そして最後に惚けたようにへたり込んでいる女の子。
 立ち位置的には教室のグラウンド側の隅に俺と氷室、その間にバケツ、そうしてその間を結んで伸ばした教室の入り口の向こうに三枝と言う位置関係だ。
「あ…………違うの、違うんです、わたし……」
 首をふるふると振りながら彼女は泣きそうな声でただただ否定の言葉を紡ぐ。
 けれど悲しいかな、そんな嘘ではこの俺ですら騙せない。
 ――――扉の向こうにいたのは陸上部のマスコット三枝由紀香だった。
「何が違うのかな? 由紀香」
 まるで斬りこむように氷室は酷く冷たい口調で言った、覗いていた事を咎める口ぶりはきっと俺との逢瀬を邪魔された苛立ちから。
「わたし、わたし……」
 三枝には普段のほにゃっとした笑顔は今は跡形もなく、可愛らしいその容貌には羞恥と戸惑いが多い。
 はだけたブラウスと着崩れたスカート、曝け出された控えめな胸や濡れた下着を見るまでもなく三枝が此処で何をしていたのかなど明白だった。
 普段とは違う女の貌、その体のそこここには隠しきれない情交の痕跡がある。
「わたし達の行為を見ながら、一人で盛り上がっていたのだろう?」
 そんな三枝に向かって、まるでトドメを刺すかのような冷酷さで氷室は言った。
「あ、あぁ……」
 呆然と呟くその瞳には涙、三枝はその体を震わせながら氷室の言葉に耐えている。だがしかしこれではどちらが苛めているのか分からない、ややこしくなると思って黙っていたがそろそろ氷室を止めた方がいいだろう。
「そこまでにしとこう氷室、三枝さんだって悪気があって覗いていた訳じゃないし、それに――――こんな場所でしたいって言い出した俺が一番悪いんだから」
 そうなので、もともと俺が冗談のつもりでこんな教室でしたいと言い出したのがそもそもの始まりなのである。
 冗談だったはずのその提案に氷室は大乗り気で、ドキドキしながら俺達はまだ誰が来るかも知れない禁断の行為に耽ってしまっていた。
「それも、そうだな……」
 確かにそれは正論だと、氷室は納得してくれたようだった。
 改めて三枝に向き直ると、深く深く頭を垂れる。
「由紀香、酷い事を言ってしまってすまなかった。どうも最近のわたしは衛宮の事となると歯止めが利かなくなっているんだ」
「あ、そんな謝る事なんて……」
「いや、謝らせて欲しい。わたしは大切な友人を傷つけてしまったのだから――――ただ、謝っている最中に悪いのだが衛宮とのセックスを邪魔されてしまったのは許せないんだ」
「――――!?」
「おい、氷室……」
 俺の制止にも関わらず、氷室は瞳を閉じたまま言葉を続ける。
「由紀香が悪くないのも分かっているし、由紀香が怒るのも分かる、だがどうしても自分の心が抑えられない」
 そう言うと氷室はこつんと俺の胸に頭をぶつけて来た。
「まったく、朴念仁の癖に……」
「…………?」
 やっぱり最後まで言わなければならないのか、そう言って氷室は溜息を付くと、両手で俺の頬を押さえつけた。
「大切な三枝のちょっとしたミスさえ許せないくらいに、本当にわたしはどうしようもないくらい衛宮にイカレているってことさ」
 そうして赤面する俺と三枝さんに構わずにそんな爆弾発言をする氷室。
「あ、う……」
 どうしていいか分からず思考がフリーズする、口から漏れる言葉は意味を持たずころころと転がっていく。
 頬に氷室の熱を感じる、冷え性ぎみなはずのその手はまるで焼けた鉄のように熱く熱を持っているような気がした。
「それに、恋人が他の女に色目を使うのは、わたしとしてもあまり気分のいいものじゃない」
「――――なっ!?」
 ちょっと、待て俺が何時三枝に色目なんて使ったって言うんだ!?
「スケベ、三枝の事がそんなに良いのか?」
「ちょっと待てって、一体……」
 弁解をしようとしてもそんな暇さえなく、まるで魔法のような一撃が来た。
「好きだ、衛宮」
 たった一言で体中の血が沸騰し、目の前が白くなり、全身の気が逆立った。
 それだけでも致命傷だと言うのに、オーバーキルもいいところなとっておきのトドメが叩き込まれる。
「わたしじゃ、嫌……か?」
 それは俺にとって本当に魔法だった。
 涙目で俺を見上げる、普段は絶対に見せてくれない弱弱しい姿の氷室。
 その言葉が俺の胸を微塵に千切って粉々にしていってしまう。
 本当に氷室は卑怯だ、そんな風に言われてしまったら三枝が見ているとか、此処が教室だとか、全部が全部どうでもよくなってしまうじゃないか……。
「そんなことない、氷室だからいいんだ、俺は氷室好きだ」
「――――んっ!?」
 叫ぶようにそう言って荒々しく唇を重ねた、何度やっても酔いしれてしまう情熱的で淫らなディープキス。
 唇を絡める、唾液を啜り、歯茎をしゃぶり、吐き出す息を交換し合う。
 死んでしまいそうな快感、いつまでもこうしていられればどれくらい幸せか分からない。
 けれど今回のキスは以外な程に短かった。
「――――わぁ、鐘ちゃん……大胆」
 その言葉で今度は氷室から体を話した、がっついて舌を伸ばす俺を手で制して、氷室はその豊満な胸を自慢げに張って宣言する。
「ふふ、何とでも言うがいい、わたしと衛宮の燃え盛る愛の炎はその言葉で燃え上がる事はあっても、決して消せはしないのだからな!」
 せいぜい見せ付けてやろう、そう言って氷室はまた唇を重ねてきた、俺も熱烈にそれに応じる。三枝に見られているせいか今までにないはっちゃけぶり、もはや素直クールと言うよりは素直エロス――――しかしそんな氷室が大好きだ!!
 此処が学校でなかったら、きっと俺は腹の底から叫んでいたであろう。
 それくらい氷室が愛しかった。月とか太陽とかそんな比喩さえどこまでもチープ、氷室は氷室だ、掛け替えのない、俺の彼女だ。
 すまん慎二、馬鹿にして悪かった――――確かにバカップルって最高だ。
「んちゅ、ん……んあぁ、ふ……ふふ……あぁ、そうか、ひょっとして由紀香は羨ましかったりするのか?」
「えっ? ええっ!?」
 目を皿のように俺達の情事を眺める三枝に向かって、氷室はそう言う。
 そうして氷室は妖艶に微笑むと、ぺろりとその唇を真っ赤な舌でなぞった。
 見せ付けるように、艶めいた笑みを浮かべる。
「凄いんだぞ? 衛宮は」
「凄いって、何が……」
 分かっているはずなのと、戸惑ったように三枝は一歩後ずさった。
「ナニが、さ」
 そうして氷室はゆっくりと腕を降ろし……
「――――っ、あっ!? ひっ、ひむ、ろ」
 しなやかな腕は片方は俺の菊座へ、そしてもう片方は前へと回された。
 そうしてそのまましゅしゅと軽く扱かれる、甘い疼きに再び俺自身は硬度を増していく。
 三枝の食い入るような視線に焼かれながらも、氷室のテクニックの前には欠片も抗う事は出来はしない。
 あまりの快感に思わずに膝立ちになってしまう俺の背中を、氷室の舌がしゅと舐め上げていった。
「ひゃ!?」
「ああ、いいぞ衛宮、とてもいい声だ……」
 後ろに首を回せば、サディスティックに笑う氷室の顔があった。
 文句の一つも言いたかったのだけど、その顔が心底幸せそうで結局何も言えなくなってしまった。
「ひんっ!?」
 また不意打ち、今度は耳だった。
 はみはみと噛まれて思わず情けない顔、見られてると思うと、余計に恥ずかしくなってしまうのに。
 くらくらと揺れる思考、どうしようかと悩んでも何も解決する訳じゃない。
 次にどんな絡めて手が来るのか、無意識に身構えた俺に向かってとんでもなく真っ直ぐな剛速球が来た。
「愛している、衛宮」
 ちくしょう卑怯じゃんか、そんなの俺だって愛しているに決まってる。
 けれど恥ずかしくって誰かが居る場所では堂々と言えやしない、それが分かってて氷室はこんな事をしてくるのだ。
 首に絡まる氷室の細い腕、温かなその腕を握りながら俺は目の前にいる三枝さんをまっすぐに見詰めて、言った。
「俺だって愛してる、衛宮士郎は死ぬほど氷室鐘が大好きだぇ!」
 叫ぶような激しさで、恥ずかしさと一緒に全部吐き出した。
 ああ、くそ本当に恥ずかしくてたまらない、俺はこう言う人前で堂々といちゃいちゃするのはのは苦手なのに……
「これでもまだ、羨ましくないのかな?」
 氷室はぎゅっと俺を抱きしめながら、三枝を見詰めそう言った。
 我が愛しの彼女ながら氷室は本当に意地悪だと思う、目の前で両足をもじもじと擦り合わせる三枝を見詰めながら、俺はそんな事を考えた。
「……しい」
「聞こえないな、すまない由紀香もっとはっきり言ってくれ」
「……しいです!」
「もっと!」
「鐘ちゃんとエッチな事ができる、衛宮くんが羨ましいです!!」
 その言葉に心臓が飛び出すほどに驚いた――――のは、氷室も同じらしい。
 さもあらん、氷室は恋人である俺の事を自慢しつつ、それとそんな関係になっている自分が羨ましいと言いたかったのだろう。
 しかしまさか、そんな答えが帰ってくるなど到底予想できるはずがない。
 俺達は二人して、どうしようもないほど間の抜けた呆け顔で、目の前の三枝の姿を見ている。
 今もまだ恥ずかしそうにしているが、彼女には先ほどまでの弱弱しさはなく、吹っ切ってしまた者独特の無謀とも思えるほどのまっすぐ強さがあった。
 三枝は頬を真っ赤に染めながら氷室の事を見詰めている、その表情は少女でもなければ女でもない――――氷室と同じやらしい牝の貌を象っていた。
「衛宮君、手伝ってくれますよね?」
 壮絶な笑顔を浮かべ、妖艶な娼婦のように三枝は言った。
 氷室を初めて家に連れて行った時の桜と同じ匂いがしたような気がする。
 ――――正直言って、物凄く恐かった。
 



「あっ、すごっ、んっ……ああ!? ひぐっ、あ……凄いよ、衛、宮……くぅん!?」
 その華奢な体で氷室を組み伏せながら、三枝は鼻に掛かった声で存分に啼いてくれる。
 淫らな喘ぎと熱い吐息をBGMに、俺は肉付きの薄いその尻へと、がつんがつんと力任せに腰を打ち付ける。
 一突きごとに三枝の体からは汗が飛び散り、その艶かしく上気した背中が俺の網膜に焼き付いて離れない。
 氷室のものとはまた違った包み込むような優しい感触に酔いしれる。
 ずちゅずちゅとぬちゃぬちゃと一回ごとにやらしい水音が誰もいない教室に満ちて、誰もが闇に落ちたこの部屋のなかで一匹の獣と成り果てる。
 絡み付き締めて抜くたびに引きつれてついてくる柔肉の感触が吐き出してしまいそうなほど気持ちいい。
「凄い、よ。三枝……」
 とてもついさっきまでは初めてだったとは思えない乱れように戸惑いながら、片時も愛撫とピストンは休めない。
 ひょっとしたら三枝にはそういう才能があったのかもしれない、思わずそう思ってしまうほどすんなりとこの状況に順応していた。
 放課後の教室に淫らに咲く一輪の白い花、そんな氷室に絡みつく三枝はさしずめその蜜を啜る揚羽蝶と言ったところか。
 あまりにも綺麗で美しくて、何処までも何処までも二人の体に溺れていく。
「んん、ふぁぁ!? ゴリって、ゴリってしてる、よぉ……やぁ、やあぁ!」
 膣の奥深くを雁首で擦る、まだ馴染んでいない三枝の胎はぎこちなく――そしてきつい。
「――――気持ちいい、おかしいよむずむずして、変な感じっ、あっ!? なのに気持ちいい、よぉ……!」

「三枝、そんなに締める、と……」
 出ちまう、と言おうとして唐突に引き抜かれた。
 急速に滾っていた射精感も失せ、すぐそこまで降りてきていた塊もすごすごと逆流して戻っていく。
「ごめんなさい、けどもう少し我慢してくださいね」
 三枝はいつもと変わらない口調で平然とそんな事を言う。
 なんて残酷で、男の心の捉え方を心得たやり方だろう、やはり三枝は恐ろしい。
「なぁ、由紀香……」
「なぁに? 鐘ちゃん」
 三枝さんに組み敷かれたままで、氷室は弱弱しく声を漏らした。
「そろそろ衛宮をかえしぃん!?」
「ふふ、やっぱり可愛いなぁ鐘ちゃん」
 氷室の言葉を皆まで言わせず、三枝が氷室の脇を舐め上げたのだ。
 産毛を食み、舌を這わせ、俺がつけたキスの痕を丹念に辿っていく。
 三枝の責めには容赦ってものがない、まるでセックスを覚えたての頃の俺と氷室のようにただ必死になって相手へぶつかっていく。
 三枝は休みなくただ夢中で攻め立てていた、少しでも相手が気持ちよくなれるように、そしてそれ以上に自分が気持ちよくなれるように……
 そのせいか氷室は息も絶え絶えで、普段ならこの程度の拘束など抜け出せる筈なのに今は三枝にされるがままだ。
「鐘ちゃんのおっぱい、おいしい」
「やめてくれ、恥ずかしいんだ……由紀香」
「ふぅん、あれだけやっておいてまだ恥ずかしいんだ鐘ちゃんは……このおっぱいで衛宮くんのおち○ちんをごしごしやったりしてあげたりしてたのに」
 どう見ても今の三枝の様子はおかしいのだけれど、今の俺にはそれを指摘するだけの余裕がない。
 俺が戸惑っている間にも、三枝はテキパキとした動作で俺に向かってヒップを突き出すような格好へと氷室の体位を変えさせてしまった。
 当然、雫を零し続ける氷室の女の子部分もその上の小さな蕾も余すところなく見えてしまう。
 食い入るように見詰める俺を挑発するかのように、三枝の手が氷室の引き締まった白く小さなヒップの上を這った。
「ほら、衛宮くん鐘ちゃん欲しがってる……」
「えっ、其処は……」
 驚きの声を掻き消すように、悲鳴じみた喘ぎが巻き上がった。
「あがっ!?」
 三枝が手で俺を導いた先、そこは氷室のアナルだった。
 呼吸のたびにひくひくと物欲しげに収縮する、排泄の為の器官。
 本来なら性交になど使用しないはずのそこに、三枝はたっぷりと唾液で湿らせた中指をゆっくりとした動作で押し込んでいく。
 焦らすように緩慢な、有無を言わさぬように強引な、慈しむように繊細な、そんな動き。
「痛っ、やめっ……三枝!」
「凄いよ鐘ちゃん、どんどん飲み込んでいって、とってもやらしい……」
 三枝の声は軽く鼻にかかっていて、呂律が少しだけおかしくて、まるで夢の中にいるみたいだった。
 いや実際今三枝は望み続けた夢の中にいるのだと、改めて思い直す。
 ――――知ってた? 鐘ちゃん、ずっとわたし鐘ちゃんに憧れてたんだよ?
 愛の言葉でも囁くように言った三枝の言葉が、今も俺の耳に残っている。
 蕩ける言の葉と体、目前に晒された三枝と氷室の媚態、なにもかもが分からなくなっていて、何もかもどうでも良くなってしまう。
「ひぐっ!? やはぁ……三枝、あふっぅ、っあぁああ……!?」
「本当に鐘ちゃんはエッチだね、もう三本も入っちゃった……」
 そう言って三枝は俺のほうへ振り向いた。
「ねぇ、衛宮君鐘ちゃんを気持ちよくしてあげて」
 呆然と立ち尽くす俺の瞳が捉えたのは、三枝の細い指によって、ぱっくりと口を開けた氷室の穴だ。
 僅かに藤色がかったその陰門は、普段の慎ましやかなど微塵もなく俺に向けてその中身を余すところなく曝け出している。
 べとべとに塗れ、光るその液体は氷室自体のものかそれとも三枝のものなのか俺には判断がつかなかった。
 ぱたぱたと蜜を床に零す満開の花の上で、ピンク色の空洞が俺を待っていた。
「あ、ああ……」
 操られるように足を前に進めた――――僅かに三枝が笑みを深める。
「駄目だ!? 衛宮、そこはっ……」
「あれ、衛宮くんの為ならなんでもするんじゃなかったの? 鐘ちゃん」
「――――っ」
 氷室には悪いと思うけどさんざん焦らされたせいで俺も止められそうにない。
 だからせめて、心からの謝罪だけは伝えておかないと。
「氷室、ごめん。俺今凄く氷室のお尻に挿れたいんだ……」
「――――っ!? 衛宮、あはぁ!?」
 宛がった状態で話をしていたのが悪かったのか、まるで魔法のように動いた三枝の指が俺の先端を氷室のなかに導いた。
 そして一度氷室と一つになってしまえば、俺はどうしたって我慢なんて出来るはずがないのだ。
「あぁ、可愛いよ。素敵だよ、鐘ちゃん、鐘、ちゃん……」
 虚ろなうわ言を隣に聞きながら、ゆっくりとペニスを押し込んでいく。
 三枝は片手で氷室の秘陰を責め立てながら、もう片方の手で自分を慰めていた。
「っぁ、痛っ……あ、んん、凄いよ、凄いよ衛宮、変なんだ……嫌なはずなのに、あっくぅ、気持ち悪い筈なのに、っあ、お尻がぁ、おし……ふぁぁぁぁ!?」
「氷室、好きだぁっ、あいしっ、ぐぅっ、愛して、愛してるっ!」
 三つの喘ぎ声の三重奏だ、こんなのが誰か聞かれてしまえばどうなるかなんてこれっぽちも俺の頭にはのこっていなかった。
 つるつるとした腸壁の感覚がペニスを撫で擦り、背中には背骨の代わりに神経が詰まっているみたい。
 ぎゅっと引き絞られて、それに耐える為に血が滲むほど唇を食いしばった。
 もう何もいらない、気持ちよくて何も考えられない、俺はどこまでも氷室に溺れていく。
「えみやぁ、もうっ、もうっ……」
「あはぁ、やんっ、きもちぃよぉ、かねちゃぁ、んんんぁぁ!」
「もう駄目だ、出っ!?」
 最後の限界に向けて、俺達はシンクロしていく。
 快感のギアはトップスピードに、全てを振り切って真っ白になっていく。
 そして――――

「あっ……くぅあああぁ!?」
 ――――情けない事に、二人よりも一足早く俺は氷室の胎内に盛大に白濁をぶちまけた。 



 






「ところで、なんでこんな時間に教室に?」
 考えてみればそれはまず一番初めに聞いておくべき問いだった。
 偶然なら問題ないのだ、と言うか、むしろそうであって欲しい。
 三枝は教室に何か忘れ物をして、それを取りに戻ったのだと言うのが一番ベストだった。
 なんせ俺達がやっているのは学園からすれば立派な不純異性交遊である、教師陣になど見つかりでもしようものなら一発停学は確定だろう。
 ましてやきっと事態はそれだけでは終わらない、怒り狂った虎の瀑布の如き突き!突き!突き!で俺は次の朝を迎える事無く哀れ肉片と化すのは明白だった。
 やばい、想像だけで寒気が……
「えっと、部活の後に待ち合わせって事になってて……」
「――――誰と?」
 三枝は僅かに息を詰まらせ
「……蒔ちゃん」
 と言った。
「そうか、蒔の字か……」
「おい、氷室お前何か空恐ろしい事を考えてないか?」
「いやいや、これっぽっちも。ふふふ、一体どんな声で啼いてくれるかな……」
「そうだね、此処まで来たらいっそのこと……」
「ちょ、ちょっと恐いぞ二人と……」
 ――――俺の声を遮るように、ガタンと何かに躓くような音が聞こえ……





        Repeat Again




  

 


Q、なんか三枝さんが黒いんですけど?
A、仕様です。


Q、なんかところどころキャラ違いません?
A、仕様、ですかね?


Q、全然エロくねぇぞ、どうなってやがんでバーロー
A、仕様でしょうとも、ええ。


Q、次は黒豹をお願いすます! すます!
A、ここまでにしておくよ蒔寺


Q、JunkMetalは復活しないのですか?
A、現実は非情である、







けど信じたっていいじゃない。