ぱっつんぱっつん肌Y 雨は上がって晴れてくる。


ユウヒツ



「ああ、もう」
 蒼香はマンションの入り口に駆け込んだ。手にはコンビニで買ったお菓子やジュースその他をコンビニ袋に放り込んでいる。もう一方の手にはカサ。ただ、折れて用を成さなくなっている。
 一気に強くなった雨と風。ほんの少しと出かけたのに。全身びしょぬれ。出なければよかった。ほんの少し後悔している。
 部屋に入ったらシャワーで浴びよう。そう思った。
 手には壊れたカサ。情けなくなってくる。
 そのまま進み、エレベーターに向かう。先客がいる。
 どきりとした。綺麗な金髪美女が佇んでいた。モデルのように。
 優雅に赤い傘を持っている。濡れている。けど……。
 その身は一切濡れていない。
 綺麗な金髪にも白いセーターにも。フレアスカートにもしみ一つ無い。
 フンフンと楽しそうな鼻歌を歌いながらカサを床に叩いてる。軽く石突きの音がする。そのたびにカサについた水滴が滴り落ちる。
 楽しそうな顔でいる。本当に。
 彼女もどこかに出かけていたのだろう。近くのスーパーの買い物袋を掲げている。
 なんだか惨めになってきた。
 エレベーターが降りてきた。金髪美女とともに乗り込む。
「何階なの」
 金髪の美女は話し掛けてきた。
 えっ。と顔を上げる。
「だから何階なの」
 やっと気づいた。蒼香は自分の階を告げる。
「ねぇ、雨は嫌いかな」
 また話し掛けてきた。
「……好きな奴なんて少ないだろう。ましてこんな大雨だと」
 そう答えた。何故か突き放したようなぶっきらぼうな口調になる。
「ふふっ、そうかな。わたしは好きだよ、雨。濡れる様子がいいし。雨の音を聞いていてもいいし。新しいカサを使いたくもなるしね」
 そう言って赤いカサを持ち上げる。新品のようだ。
「それに。楽しいじゃない。晴れた日のことを思うと。世界が曇っていてもずっとじゃない。いつか雲は消えて晴れの日が来る。そう考えるとわくわくする。雨は嫌なものかもしれない。けど、嫌なことは続かない。きっと晴れた日も来る。そういうものでしょう」
 嫌な事も考え方を変えれば楽しくなるよ。締めくくる。極上の笑顔で。

 金髪の美女は先に下りていった。一人取り残される。先ほどの言葉が木霊する。雨の音は聞こえる。──ずっと。

 月姫蒼香。一年の終わりの春休みに実家へ帰らないでいた。実家は長野にあり、父親は大きなお寺の住職で辺り一帯の地域を所有する山王と呼ばれる。
 坊主色好む。というわけでないが日本各地の愛人たちのためにマンションを与えていた。北は北海道から南は九州。精力的に活動する父親だった。このマンションもその一つ。既にそこに住んでいた愛人とは縁が切れてる。相手は結婚したのだ。
 家族との折り合いがそんなに悪いというわけでない。
 行儀作法その他は厳しく仕込まれている。ただ、娘にも理解は示していた。ライブなどに見に行くことも活動もなにも言わないでくれる。
 いずれどうなるか分からない。親に従っていきたくはない。さりとて自分に何ができる。
 漠然とした淡い夢にライブ活動をしたいというのがあった。
 だが、それは願望に過ぎなかった。
 今の天気というわけでもないが蒼香は暗雲立ち込める鬱屈した状況にあった。

 完全に決まったわけでないのだが浅上女学院を卒業後。ここから通える大学に行こうと考えてる。
 ルームメイトだった遠野秋葉のお膝元なのは単なる偶然。ここにいると言う事は秋葉には伝えていない。知っているのは同じルームメイトの三澤羽居とたまに一緒にライブを見に行く後輩の瀬尾晶だけだった。
 部屋に入るとコーヒーの準備をし、シャワーを浴びる。熱いお湯が憂鬱な思いを吹き飛ばしてくれる。そんな気がした。
 浴室から出てバスタオルで髪や体を拭う。ごしごしと。鏡に自分の小柄な体が見える。
 ……ふん。
 魅力に乏しいと感じてる。ルームメイトの羽居のふくよかな豊満な肢体。遠野の慎ましく綺麗な肢体とは比べ物にならない。もちろん、先ほどの金髪美女にも──
 ああ、分かってるさ。
 Tシャツとショートパンツのラフな格好になる。暖房は点けてある。風の音は酷い。轟々と吹き荒れてる。台風並みだ。強い雨の勢い。少し前まで小雨だったのが嘘のようだ。
 こんなときは音楽をガンガンに鳴らしていたい。それに限る。
 だが、何故かそんな気分になれなかった。

 ピンポーン。

 インターホンが鳴った。
 誰だろう。セールスその他だったらお断りだ。 
 インターホンに映るテレビ画像に目をやる。
 驚いた。
 羽居が居た。
 薄いピンクのワンピースがぐしょぬれになって。
 顔を涙でくしゃくしゃにして。
 佇んでいた。
「羽居!」
 慌ててドアに向かった。

 何があったのだろう。
 よく分からない。
 今、羽居はシャワーを浴びている。全身びしょぬれだった。ここへ来る途中にカサは壊れて吹き飛んだという。下着までぐっしょりと濡れていた。
 ドアを開けると飛び込んで「蒼ちゃん。蒼ちゃん」と泣きじゃくっていた。
 親御さんと何かあったのかな。
 詳しい事は知らないが羽居はどこかの銀行の頭取の一人娘と聞いている。
 親との折り合いは非常に悪い。
 今年の冬休みに実家に帰りたくないと駄々をこね寮に残ろうとした。まあ、見つかって強制的に帰らせられたが。
 羽居のほわほわした様子から皆はそんなに深刻に受け止めていない。
 しかし、秋葉と蒼香は知っている。根はかなり深いと。
 やれやれ。
 着替えを持っていく。浴室の曇りガラス越しに羽居が見える。ざらざらとしたガラス越しのシルエットでもドキリとする。
「ここにおいておくぞ」
 洗濯籠の中に入れる。羽居の着ていたものはみんな洗濯機に放り込んだ。着替えに少し悩んだ。蒼香の服は羽居にサイズが合わない(小さすぎる)かといって、前に住んでいた愛人の私物は既にない。結局、親父のワイシャツなどでごまかした。ブラはないがそれは仕方ないだろう。
 それが終わった後、キッチンに行き、温かいコーヒーの準備をする。羽居は見てのとおりの甘党。ミルクのカップを二つ。角砂糖を三つ用意する。自分はミルクを一つ。居間に持っていく。既に羽居はシャワーから上がってるようだ。

 入ったとたん、どきりとした。反則だろ、それ。

 まだ、乾いてない濡れた髪。そんなに手入れしてないなのにとても綺麗。
 
 いや、それより。

 小さなワイシャツを素肌にまとう。

 まだ、完全に肌は乾いていない。

 ずぼらな羽居。

 バスタオルで体を拭くのもそこそこに着たのか。

 ワイシャツが濡れて透き通る。ところどころ。

 小さいワイシャツを無理矢理ボタンで留めている。

 押し上げてる。ふくよかとか豊満とか狂気のような柔らかく大きな胸。ワイシャツが張っている。乳首の形もきっかりくっきり見える。しかも抜けて透けてるし。

 服の裾とかもつんつるてん。動きにくそうに顔をしかめている。

 ズボンは着けてない。白い小さなショーツのまま。

 ああ、それは絶対に反則だ。

 沸騰する。女の自分でも圧倒的な色香に沸騰する。

 髪のお手入れとか肌のお手入れとかはいつもズサンな羽居。そんな事に気にかけることは無い。

 なのにくらくらするほど可愛く色っぽい。

 ため息が出る。出てしまう。

「蒼ちゃ―ん。この服窮屈々だよう」
 少し涙目で伺う。可愛い。
 ああ、いかん。あたしはそんな気は無いはずだ。
 よく、クラスメートたちがあたしたちの事を「ベストカップル」とか「お似合いすぎて死ぬ」とか言われる。大柄な羽居と小柄なあたし。故にだろう。けど違う。違うはず。

「んっ、どうしたの、蒼ちゃん」
 だから、その格好で前かがみになるな。胸っ! 胸がこぼれるだろう。
 うんっ? と、可愛く、可愛く首をかしげる。いかん。理性が吹っ飛びそうになる。深呼吸。深呼吸。
「なんだよ、その格好は」
 努めてぶっきらぼうに話し掛けた。
「えー、蒼ちゃんが持って来た服だよ。これ」
 ああ、だから、服の裾とか掴むな。見えるだろう。
 しかし、しまったなー。親父のかと思ったら、間違えて自分の持ってきてしまったか。
「わりい。服、間違えたみたいだ。それ。あたしのだ。待ってろ。今、代わりを持ってくる」
 コーヒーを載せたお盆をテーブルに置いて言った。少しため息をはく。
「まって。これ、蒼ちゃんのなの」
 羽居が引き止める。
「……そっか、蒼ちゃんのなのね」
 何故か自分の体を抱きしめる。
「そっか。そうなのね」
 優しく愛とおしむ。
「うん。いいよ。これでいいや」
 そういって、テーブルの前に座る。
「……まあ、お前さんがいいのならいいが」
 テーブルにコーヒーを並べる。ミルクと角砂糖、スプーンも置く。
「あっ、まって、蒼ちゃん。砂糖とミルクはいらない」
 えっ。となる。
「おいおい、どういう風の吹き回しだ。お前さんが砂糖とミルクがいらないなんて大雨になるぜ」
 既に外は大いに荒れに荒れて大雨である。
 …………。
 沈黙してしまう。
「いらないといったらいらないの」
 そう言って羽居は強引にコーヒーカップを手に取り飲む。
 案の定、苦いといって顔をしかめる。
「だから、ムリするなよ」
 砂糖とミルクを勧めるが頑なに首を振る。そのまま飲む。苦い、苦いと呟く。そのまま強引に飲み干してしまった。
 やれやれと少しため息。
「……何にも聞かないんだね」
 ポツリと呟いた。
「いいたければ言えばいいさ。それで気が晴れるならな」
 外の雨はますます酷い。風も叩きつけるように吹いている。
「とりあえず、今日は泊まれ。この天気は明日まで続くだろう。親御さんには連絡──」
 あたしが途中まで呟くように言ったときだ、
「やめて」
 羽居は遮った。
「あいつらの事を言うのはやめて。知らない。あんなのはわたしは知らない」
 泣きじゃくり始めた。いやいやと首を振る。あんなの親でも何でもない。そういう言葉まで出る。
 やれやれだな。
 どうしたものかと考える。そうとう大きくやりあったなと思う。だが、それだけだ。
「まあ、いいさ」
 そう呟いて立ち上がる。あとに遠野にでも連絡して取り次いでもらおう。自分は羽居の実家は知らないが、遠野なら何とかなるだろう。
 そう考えながら空になったコーヒーカップを片付ける。キッチンで洗う。めそめそと羽居は泣いている。
 どうしたものかな。
 外の雨の音は強くうるさいくらいだ。

 居間に戻って驚いた。
「羽居! 何してる!!」
 自分でも信じられないくらい荒げた大きな声。
「ほえ?」
 なのに緊張感無くこっちを向く。
「あー、蒼ちゃんだ。蒼ちゃん。どーしてここにいるの?」
 とろんとした目でこっちを指差し笑う。
 まあ、マテ。
「ここはあたしの家だからな」
 強く強く深呼吸する。
「ということは──わたしの家でもあるんだよね」
 だから、どうしてそうなる。目の焦点は合ってない。コップに琥珀色の液体をビンから注いで一飲み。
「ぷはー。くらくらするよー」
 ああそうだろうな。ウイスキーを生で飲めばそうなるな。羽居はサイドボードに置いてあった親父の酒を無断で飲んでいた。水割りも何も無い。生のままで一気に。
「ほんとにどうしたんだ、おい。今日のお前さん、少し変だぞ」
 なんというかあきれ返った口調になる。
「だって、大人だもん。わたし大人だもん。羽ピンは大人なの。だからお酒を飲むの」
 そう言って、またくいっと一飲み。だから、やめろって。
「いいかげんにしろよ」
 無理矢理、酒瓶とコップをもぎ取る。少しこぼれる。同時に羽居の目にまた涙がこぼれる。
「わたし、大人だもん。子供でないもん。返して。飲ませてよー」
 取り返そうとこっちに引っ付き手を伸ばしてくる。うわ、よせっ、こぼれる。
「だから、そういうのが子供というんだ。落ち着け。少し落ち着け」
 何とか死守。
「やだよー。やだ。わたしは大人なの。だから、あいつらのいうことは聞かなくていいの。どうして。どうして子供だから大人の言う事聞かなくてはならないの。子供は親の言う事を黙って聞いてなきゃいけないの。やだ。わたし、やだ。わたしはわたしなの。干渉されたくない! 決め付けられたくない! やだー!!」
 ごちゃごちゃになってる。屈折している。普段のほえほえとした様子は完全に消えている。泣きながら酒に手を伸ばす。伸ばそうとする。
「よせ。それが子供というんだよ」
 取られた酒瓶とコップ。思わず手が出る。気が付いたときには叩いてた。頬をパシッと叩く。自分の手のひらが痛い。熱い。しばし呆然とする羽居。
「うわあああああん。叩いた。蒼ちゃんが叩いた。うわぁぁぁぁぁん」
 その場で伏せて泣き始める。何も出来ない。謝る事は出来ない。ただ、その背中。柔らかい背中を優しくさするだけ。
 うわぁぁぁぁぁぁん。
 泣き声が響く。雨の音も響いている。

「落ち着いたか」
 外はもう暗い。雨も勢いも少し弱くなってきた。
「うん。ごめんなさい」
 落ち着いたのか。それでも目は真っ赤に晴らしている。けど、その愛しさは変わらない。守りたくなる。
 ポツリポツリと語った。
 それは卒業後の話だった。羽居としては浅上女学院を卒業後、大学に進学したいと考えてる。しかし、親達は違った認めないどころか、卒業後は結婚しろといってきた。親の指定した相手と。見合いはするが実質的には結婚とほぼ同然に等しいとか。
 言葉は出ない。浅上女学院。歴史はそう古くないが新進のお嬢様学校として認知されつつある。
 一種のステータスと言っていい。
 そういったものに群がるのは昔からよくあること。
 ポッと出た成金が落ちぶれた名家と結びついたりする。
 そういう感じなのだろうか。
 それにしても……。
 なんとも言葉が出ない。
 子を道具とでしか見ていない。
 そんな印象を受ける。
 もちろん、羽居の主観的な話なのでそういう印象が強くなるのは仕方ないかもしれない。
 ただ、やはり強引に思える。
「子供だから。わたしは子供だから親の言う事を黙って聞いてればいい。その一点張り。ねえ、そうなの。わたしは子供だから親の言う事聞かなきゃならないの。何も自由なんてないの。いやだ。わたしはいや。もっと、もっと──自由に生きたい」
 その嘆きは悲痛に満ちていた。何もいえないでいた。
「ねえ、どうしたら大人になれるの。いつから子供で無くなるの。わたしは大人になりたい。早く大人になって、あいつらの言う事を聞かなくてすむようになりたい。ねえ、どうしたらいいの」
 ああ、だからなのか。コーヒーに砂糖とミルクを入れるのを拒否したのも。ムリにお酒を飲んだのも。ただ、早く大人になりたい。大人だと証明したい。そんな思いに駆られてだろう。
 どう答えればいいのだろうか。分からない。自分でも悩む。大人と子供の曖昧な境目。学校を卒業したらなのか。働き始めたらなのか。成人になればなのか。普通はそうだろう。だが、そうでない気もする。自分もなんだかんだいっても子供だ。そう、自覚している。自分も子供だ。まだ。
「…………とりあえず寝よう。後のことは明日にしよう」
 逃げてしまった。

 寝室は一つしかない。ベットも大きいのが一つ。元の目的が目的だけにそれで十分なのだろう。
 二人で並んで潜り込む。もう一人ぐらいならさらに並べられるぐらい大きい。
 電気を消して暗くする。雨の音は少し静かになった気がする。
「蒼ちゃん──起きてる」
 羽居の声。答える。
「ああ」
 そして沈黙。
「なあ、羽居。お前さんはどうしたいんだ。将来、何をしたいんだ」
 問い掛けてみる。
「んー。将来。うーん。うん、幸せなお嫁さんになりたい」
 非常にしっかりした将来観だった。
「相手はどうするんだよ」
「うーん。どうしよう」
 少なくても今の浅上女学院では出会いの機会はものすごく少ない。
「だから、世の中を広く見たい。どんどん知りたい」
 そのために大学進学を考えているという。羽居はこう見えても頭はいい。彼女の成績ならば大抵はクリアできると思う。
「ふーん。でっ。どんな奴がタイプなんだ」
 何気ない問いかけだった。自分の場合。どうなんだろう。どんな奴がタイプなのか。分からない。ライブとかで見かける男たち。軽薄で相手にするのも馬鹿らしい。
 そういえば……。
 遠野の兄貴。一度、会ったことがあるなー。
 瀬尾と一緒に居た。瀬尾は憧れの人なのといっていた。秋葉も口ではなんだかんだいいながらも──兄貴に夢中のようだ。兄妹としてではない。男と女として好きのようだ。
 分からない。あんななよなよして子犬のようなしまりのない奴のどこがいい。人当たりがいいのだけが取りえに見える。ただ。ただ、気にかかる。優しい雰囲気にゾクリとしたのを感じる。とくにその瞳。
 ふん、馬鹿らしい。何を考えてるんだあたしは。
 取り留めのない考え。口にしながら考えていた事。だから羽居の言葉は聞き逃した。
「んー。蒼ちゃんかな。好みのタイプ。うん、お嫁さんになるなら蒼ちゃんがいい。貰ってくれる?」
「ああ、そうか。まあ、別に構わんが──てっ、マテ―。あたしは女だぞ。一応」
 がばっと起き上がって抗議した。
「へへ。嬉しい。貰ってくれるんだ―。お嫁さんにしてくれるんだ―」
 嬉しそうにはしゃぐ。なんだか全てを許したくなる。
「あのなー。あたしは女だ。結婚なんかできるか」
 そんな抗議もどこへ行く。
「えー、どこかの国では女同士でも結婚できるしー。蒼ちゃんかっこいいしー。うん、もしかして男なんじゃないの蒼ちゃんは」
 ああ、白くなる。頭の中が白くなる。
「よし、確かめてみよう」
 この言葉と同時に襲い掛かってきた。一瞬、呆然としていたため対応が遅れた。
「こら、待て。圧し掛かるな。重い。こら、どこに手を入れてる」
 そのふにふにと柔らかい体を生かして飛び掛り、小柄な蒼香を動けなくする。ショートパンツの中に手を入れて股間をまさぐりだす。
「うーん。無いな。無いなー。蒼ちゃんの男のしるし、どこにも無い」
 ショーツの中にも手をやり直接刺激してくる。何とか抵抗しようとする。だが、羽居の柔らかい感触と甘い匂いにくらくらしてくる。
「……あっ」
 実は先ほどの羽居の肌Y姿。少し熱くなって濡れていた。今は収まっていたが。柔らかい羽居の手が秘裂を直接愛撫してくる。優しく優しく。目の前に羽居のショーツ姿の股間も見える。くらくらする。柔らかい。
「……馬鹿野郎。お風呂とかで何度見たろ。あたしには生えてない」
 何とか抗議する。我慢の限界だ。
「えー。なんかで刺激すれば生えてきたのがあったよ。蒼ちゃんは違うの」
 そう言って肉芽を弾くのは反則だ。何度も何度も刺激して愛撫してくる。
「あっ、あっ、あん」
 鳴いてしまった。思わず。そして──
「あれー。濡れてきたよ。どんどん濡れてるー。すごーい」
 なんだか腹が立つ。指を伸ばす。
「あっ、きゃん。ああん。ダメ。蒼ちゃんダメ―」
 目の前に見える羽居のショーツの中心。人差し指で挿してやった。ぐりぐりと動かしてやった。だんだん熱くなる濡れてくる。
「何がダメなんだ。お前さんもあたしのを触ってるだろうに」
 意地悪く笑ってさらに刺激する。下着越しに強く押す。下着越しに肉芽を捜して摘む。
「きゃふー。あーん。ダメ。ダメ―」
 そう言ってこっちを振り向く。その表情を見ただけで濡れてくる。じわりじわりと秘裂からしたたり広がるのを感じる。潤んだ目。少しよだれのこぼれた小さな唇。頬は赤く上気している。
「蒼ちゃ―ん」
 よって来る。するすると顔がよって来る。
 キスをした。甘い甘い。熱い熱い。蕩けるキス。ああ、これはファーストキスだった。
「えへへ。わたしのファーストキス。蒼ちゃんにあげるね」
 何も言わずにキスをした。今度は舌を入れた。向こうからも入れてくる。
 
 あたしにはそのケが無かったはずなのにな。くそ、羽居が可愛すぎるのがいけないんだ。

 上から圧し掛かる羽居の胸に手を伸ばす。小柄な蒼香のワイシャツ。無理矢理押さえている。羽居の大きな胸を。揉んでみる。ワイシャツ越しに。生地はピーンと張っている。柔らかい。たぷたぷと豊満な感触。いつまでも触っていたい。それで居て固く尖る感触。摘んでみる。
「ああーん。ダメ。ダメだってば」
 鳴いてくれた。何度も何度も揉んでみた。いつまでも飽きがこない。

 プッツ−ン。
 
 はじけ飛んだ。ワイシャツのボタンが弾け飛ぶ。あまりの巨乳に堪えれなかったのだろう。ちょうどいい。直接揉む事にしよう。うん。感触は最高。まさに吸い付いた感じがする。
「もう。お返し」「あっ、あはっ」
 羽居は唇を下げて蒼香のTシャツ越しに乳首を噛んできた。ブラは着けていなかった。布一枚の感触越しに舐めて甘噛み。吸い付いてくる。
「……馬鹿。あたしの胸なんて面白くも何ともないだろう」
 甘い疼くような刺激。みるみる固くなる。舌で嬲られる。ペロペロと縦横無尽に乳首を舌で動かされる。猛威っぽいうには指の刺激。捻られ弾かれ指で押される。
「えー。そんな事ないよー。乳首がTシャツ越しに尖っていていやらしいよー」
 口にたまった唾をたらす。舐めまわす。みるみるうちにTシャツは濡れていく。先ほど羽居が飲んだ酒の吐息。甘くて気持ちいい。
 必死で吸い付く乳首の刺激に堪えながら膝を立てる。覆い被さる羽居の股間に当てる。
「ああっ、だからダメだってばー」
 ぐりぐりと押してやる。もうショーツは用を足さないほど濡れている。膝がびしょびしょになるほど。
 そのあいだに手は胸に。柔らかく垂れ下がる胸はパンチングボールのよう。摘み引っ張り弾く。頭を上げて直接下から啜る。
「ああん。ああーん」
 鳴いてきた。さらに鳴かせたくなる。
「……ねえ、蒼ちゃ−ん。もう一度キスをして」
 求めに応じてキスをする。羽居の大きく柔らかい胸と蒼香の薄く小さな胸。けど、乳首は互いに尖って自己主張している。キスをしながら互いに乳首が触れ合う。気持ちいい。キスをしながらこすり合う。本当に気持ちいい。溶ける。融けていく。蕩ける。胸の刺激が一体感を呼ぶ。
 いつしか互いの手は互いの秘裂にのばされる。熱い刺激。柔らかく蕩けていく。
「……羽居」
「……蒼ちゃ−ん」
 二人は生まれたままの姿になり互いに求め合った。
 雨はやんでいた。いつのまにか。

 
 外は快晴。昨日の大雨が嘘のようだ。
「こら、ひっつくな」
 羽居は蒼香の腕に抱きついてくる。
「えへへっ。だってー」
 幸せ一杯の笑顔。あれから二人は朝方まで行為は及んだ。昼過ぎに目を覚ました。とりあえず春休みの間は羽居はここで蒼香と暮らすことになった。親にも夕方には連絡するつもりだ。
 羽居は着の身のままでここに来たため何の準備もしてない。当座の生活用品を買い物に行く事にした。
「だから、よせ」
 さすがに外でのイチャイチャは恥かしい。そうこうしているうちにエレベーターが来た。
 途中で止まり誰かが入ってくる。
「……あっ」
 昨日の金髪美人。ちらりとこちらを見て少し笑う。なぜか羽居はぎゅっと腕に抱きついてきた。
「ねっ。昨日言った通りでしょう。雨の日は続かない。いつか晴れの日が来る。そう思うと雨はいいもの。だって、いつも晴れだと面白くないしね。雨の日があるから晴れた日は嬉しくなる。そうでしょう?」
 その言葉に少し考えて。
「そうですね。そうかもしれないです」
 いつしか消えていた。自分の中のもやもや。羽居と一緒に居るうちに消えてしまってた。
 ああ、そうかもしれない。不安もある。怖くもある。けど、大丈夫。雨の日は続かない。今日のような快晴はきっと来るのだから。
「それじゃあ、また」
 金髪美人は一階に降りるとどこかへ行った。颯爽としていて綺麗だった。ああ、憧れる。綺麗とは。かっこいいとはあのことを指すんだな。

 ぎゅっ。と背中をつねられた

「イテッ。羽居。なにするんだ」
 振り向くと羽居は怖い顔で睨んでいた。
「蒼ちゃん、浮気したー」
 えっ。
「蒼ちゃん、浮気したー」
 おいおい、だから、どうしてそうなる。
 拗ねて機嫌の悪くなる羽意をなだめながらさっそく雨の日が来たなと感じていた。
 ただ、それも可愛くて仕方ないとも感じていた。
 
 雨は上がって晴れてくる。
 それは本当に嬉しい事。



終わり。











 どうも、ユウヒツです。すごい久しぶりかも。しかも新作でないし。
 この作品は知り合いの風原氏の同人誌、はだわい。その三に寄稿した作品です。今回、特にこだわったのはシュチです。よく、女の子が彼氏の大きなワイシャツを素肌にまとうというのがありますよね。それはそれで大好きですが、きつきつぱっつんぱっつんのはだわいというのもどうでしょうかということで考えてみました。いろんなカップルでこの二人が一番似合うと考えたので。少しでも気に入ってくれたのならうれしいですね。
 では、また、次回作にて。




 ユウヒツさんより頂きましたるは、羽居と蒼香のベストカップリングにして、はだワイ。
 萌え死ぬかと思いました。
 二人のやり取りに、互いの絆や思いがにじみ出ていて、読んでいてあてられそうに。ああ、この二人は良いですなぁ本当に。
 ユウヒツさん、有難うございました。