■ 井戸端語 ■





■ 暦と駿河


「スポーツ万能の健康的な美少女だが、その左手には忌まわしい呪いが封印されていて、思い悩んでいる――阿良々木先輩、こう書くと何だか私はラノベの王道ヒロインのような感じがしてこないか!」
「ああ、まあそれは分からんでもない」
「人に見られるわけにはいかないこの呪われた力を封じ込めた包帯を、しかし私はついに大事な人を助けるために解き放つ! おお、何という主役属性ではないか!」
「解き放った結果、僕はチャリをスクラップにされてドテっ腹ぶち抜かれたけどな」
「面目ない。やはり包帯などではなく身も心も解き放ってこそだったのだな!」
「身は解き放つな服は着ろ神原。とにかく服は着ろ。いいから服は着ろここは僕の部屋でお前の部屋じゃないっ!」



「しかしよく考えて欲しい阿良々木先輩。某有名RPGでも、前衛の最高職は素っ裸になればなるほどその戦闘力が上がっていくではないか。やはり土壇場で力を発揮するには人は脱ぐべきなのではないか?」
「非常に悲しいお知らせだがな、神原。あれは「装備品」を身に着けてないだけで、ちゃんと服は着てるんだぞ? いわゆる忍者装束的なあれ……って。何でそんな悲しそうな眼をするんだ」
「私の、私のトキメキと200時間を返してくれ……」


「しかし、そう考えると阿良々木先輩の周りの人間でパーティが組めそうではないか」
「お前は忍者でガハラさんは……毒舌とホチキスの使い手って何だろうな?」
「ふむ。僧侶魔法のレベル7はかつて死の言葉を投げかけてダメージを与える物だったそうだ」
「回復魔法でも全く癒される気がしないな……」


「ていうかガハラさん的に宗教はNGだろ。僧侶系はむしろ羽川にぴったりだと思うね!」
「やはりそこに落ち着くのだろうか、羽川先輩は」
「羽川に回復魔法かけてもらいながらなら、いくらだって戦える気がするぜ! って、どうした神原。そんな微妙な顔をして」
「いや、今更ながらに思うのだが。先輩は羽川先輩から癒されるどころか吸われてばかりいたような」
「何を言うんだ神原。羽川のエナジードレインは別腹なんだから大丈夫だ、問題ない」
「いやその理屈はおかしい」


「ていうかそもそも、僕自身の扱いが微妙だろ。吸血鬼もどきってどう考えても試練場の下層の住人じゃないか」
「実は阿良々木先輩に手を握られると2レベル吸われてしまったりするのだろうか。未知の体験で怖くもあるが、ここでしり込みしては女が廃る! さあかかってこい阿良々木先輩!」
「吸えねえよ! 大体、吸い取った分僕は何が上がるんだよ?」
「服を脱いで出歩いても恥ずかしくなくなるぞ! いやむしろ着ている事が恥ずかしくなる!」
「……お前から常識を吸い取ってロストさせたのは一体誰なんだろうな、本当」



■ ひたぎと翼


「ぴこーん! 私が私らしく気付いてしまったわ、羽川さん」
「とりあえず擬音を口で言うのはやめた方がいいと思うよ、戦場ヶ原さん。それで、何を気付いたの?」
「実は全15話、アニメでパンツまで全部脱いだのは私だけなのに、何故かエロキャラではなく毒舌キャラが確立してしまっているわ。これはとても理不尽な事だと思わない?」
「……一応確認しておきたいんだけど。戦場ヶ原さん、エロキャラになりたかったの?」
「いえもちろん願い下げなんだけど。でも私の代わりに神原がエロキャラってなんか負けた気がするじゃない。師匠として」
「そこは負けていい部分だと思うよ……」


「そもそも、一番のエロキャラって絶対に阿良々木君だと思うんだけど」
「どうかしらね。確かに今の彼はスカートが揺れるのにもエロスを感じるみたいだけど。そのくせこちらから脱いで迫ると何も出来ずに固まってるのよ。どれだけチキンよあの男! 飛べない鳥にも程があるのよ」
「だよねー。私のおっぱいも揉む寸前で泣き入れてくるくらい柔らか骨無しだよね阿良々木くん」
「え?」
「え?」


「待って。ちょっと待ってちょうだい羽川さん」
「あれ、阿良々木くんから聞いてなかった?」
「いえそこは良いわ後で相談するから。それよりもよ。何? あなたのおっぱい目の前にして揉まなかったのあの男? 信じられないわ。ありえない。人として間違ってるにも程があるわ」
「戦場ヶ原さんのその発言が人としても女としても間違ってるよ……」


「じゃあ代わりに私が揉むわ。あの男の彼女として、責任を取って念入りに心ゆくまで」
「うーん。いいけど、じゃあかわりに私も阿良々木くんに裸で迫っていい? 戦場ヶ原さんの友達として、責任とって阿良々木くんのチキンフェイスを拝まないと」
「……最近自重しなくなったわね羽川さん」
「ごろにゃ〜ん♪」




■ 暦とひたぎ


「ガハラさんが羽川を家に泊めてたって聞いて正直驚いたぜ」
「何よ失礼ね。私は礼儀正しくおもてなししたわよ」
「更正したなあ。いや戻ったか」
「最近羽川さんのブラが1カップあがったのも私のおもてなしの成果かしら」
「何をしたお前。羽川に何をしたのかちょっと僕の目を見て言ってみろ」


「何よ。女の子同士のお泊まり会でおっぱい揉み合うのなんか当たり前じゃない。男だってお泊まり会したらふにゃちん揉みあうんでしょう?」
「し ね え よ 。」
「嘘!? そんな筈ないわ! 本に書いてあったのに……」
「取り敢えずその神原から借りた本は燃やせ、頼むから」
「見くびらないで欲しいわね。そんなの、私が買った物を神原に貸したに決まっているでしょう?」
「そんなトンチキなBLネタを真に受けるお前を見限りたいよ僕は」


「冗談冗談。ガハラジョークよ阿良々木くん。いくら私だって、阿良々木くんがそんな事してるなんて思ってやしないわ」
「安心したが、別の方向で僕はお前が心配だ。おもにジョークのセンスで」
「そもそもそんな事出来る友達がいないでしょう? ていうか今も男の子の友達いないものね阿良々木くん」
「人の心を抉り取るセンスは抜群だな!」
「ええと、確か人間強度が下がるんだったっけ? 大真面目に去年の春休みまでずっとそう思ってたのね、阿良々木くん。あーははは、阿良々木くんてばおーもしろい!」
「いっそ殺せ。殺してくれ……」
「馬鹿ね。何言ってるのよ阿良々木くん。殺すだなんてそんな事、私がするわけないじゃない」
「何かとホチキスで殺されそうになってる気がするんだけどな」
「何かある度にこのネタを持ち出せば、阿良々木くんが面白いリアクションしてくれるって、羽川さんと友情を確認し合ったんだもの」
「阿良々木暦ですが、彼女と親友が敵でした。もう勘弁して下さい……」


■ ファイヤーシスターズ


「兄ちゃんに彼女が出来た事にびっくりしたけど、それが羽川さんじゃなかった事に二度びっくりだったぜ」
「お兄ちゃんが真顔で、妹に「人を好きになるってなんじゃい」とか聞いてきた時は、もう手遅れだと思ったよ。でも本当、何で羽川さんじゃないのかなあ」
「月火ちゃんもそう思うよなあ。羽川さん、理想のお姉ちゃんだぜ」
「きっとアレだよ。羽川さん理想過ぎてお兄ちゃんへたれてまともに見られないんだよ」
「兄ちゃんはチキンだからなあ」
「廃棄ギリギリでしおしおのLチキ並みだよねえ」


「きっと戦場ヶ原さんにも自分から告白なんて出来なくて、電撃戦で攻め込まれたんだぜ」
「話すようになって一週間くらいだね。多分」
「ところで月火ちゃん、電撃戦って何だろう?」
「いつも火憐ちゃんがお兄ちゃんにしてる事だよ。有無も言わさず一撃必殺!」
「ナルホド! 流石兄ちゃんの彼女だぜ! ところで何の話してたっけ?」
「お兄ちゃんにおっぱい揉まれた仕返しをしようって話だよ」
「おお、あたしもファーストちうのお礼参りをしないとな!」
「じゃあわたし、バールのようなもの持ってくるから」
「よーし兄ちゃん空手の奥義を見せてやるぜ! 覚悟しろよー!」


■ 忍とメメ


「おやどうしたんだい忍ちゃん。そんなお腹を押さえてしかめっ面して」
「やかましい。腹をぶち抜かれる感覚を送りつけられれば、顔の一つもしかめるわい」
「おやおや。阿良々木くんは大変な事になっているみたいだねえ。僕の仕事も間に合うといいんだけど」
「悪党が。最初からその結果を見越して仕込んでいたのじゃろうが」
「嫌われてるねえ。でも一番面倒な解決法を選んだのは阿良々木くんだよ? そして僕はそれを仕事として引き受けたんだから、成功するように打てる手を打っただけさ」
「……ふん」
「それにしてもGWのあの猫から始まって、重し蟹、迷い牛ときてレイニー・デヴィル。阿良々木くんは本当に厄介事に首を突っ込むねえ。従僕の身としては気が気じゃないんじゃないのかい?」
「分不相応な事をしてとっとと死んでくれれば、儂は元に戻れるんじゃ。願ったり叶ったりじゃ」
「その割には何かと力を貸したり、かと思えばあれから一言も口を聞いていなかったり。いやはや。忍ちゃんも複雑だねえ」
「その不愉快な口を閉じよ、若造。喋りたくなったら喋る。それだけじゃ」
「はっはー。元気良いね。そんなに気持ち剥きだしの忍ちゃんを見たのは久しぶりだ。まあ、気づくべき事に当の本人が気付かず駆けずり回ってるのは、確かにどうしようもなく腹が立つよね」

「――ああ、どうやらツンデレちゃんが着いたみたいだ。どうするんだい忍ちゃん。結末を見届けるのかい? って、聞くまでも無かったね」
「阿良々木くんは本当に元気が良いねえ。元気よく駆けずり回って、物事ひっかきまわして解決して。それは誰かを傷つける優しさなんだって死ぬまでに気づけるといいんだけどねえ」


■ヴァルハラコンビ


「神原、結局左利きのあなたがその手になって一番大変なことは何だったの?」
「どれも大変だったけれど、敬愛する戦場ヶ原先輩の質問であれば優劣を出さなければな!」
「ええ、キリキリと答えてみせなさい?」
「うむ、結局のところ一人でスル時が一番大変だったな!」
「ええと、アレ?」
「ご明察だ! 朝昼晩毎日欠かしていなかったのだが、この手になってしまって本当に難儀だった」
「朝晩なら分かるけど昼もなんてあなたは本当に明後日の方向に独走状態ね」
「お褒めに預かり光栄の至りだ!」
「何でも肯定的に聞こえるのも才能かしらね」
「何せ力加減が上手くいかなくて。それに毛が固くてちょっとばかり面倒だった」
「いえ詳細は要らないのだけど」
「仕方なしに右手に切り替えたのだが、これが実は新鮮だった! ぎこちなさが良かったのだが、しかし三日で馴染んでしまったのが悔しかったな……」
「確信したわ」
「おお、何をだ戦場ヶ原先輩!」
「私はあなたのエロの師匠だと思ってたけれど、違ったみたい。きっとあなたは私がいなくても勝手にすくすく育ったわ。親はなくても子は育つものよ」
「そんな! 見放さないでくれ戦場ヶ原先輩!」
「……僕がいる前で平然とそんな話をするお前らを見放させてくれ。割りと切実に」



■ひたぎと翼2


「羽川さん、私思うのだけど。好きな人に私が好きな格好をしてもらいたいと思うのは、彼女として自然な事よね」
「それを私に聞くのは何か思う所があるのかと勘ぐっちゃうけど、うん、それは自然な事だと思うよ」
「彼氏の側も割と嬉しく思ってくれると期待するわよね」
「選んだ服によると思うけど……何、阿良々木くん喜んでくれなかったの?」
「ええ、私のお父さんのスーツ着てみてくれないかって言ったら、何だかとても悲しい顔されちゃったわ」
「……ごめん、戦場ヶ原さん。私もそれは阿良々木くん側に立ちたい」


「おかしいわね。お父さんも阿良々木くんもとても大好きだという乙女の自然な感情のはずだったのに」
「じゃあ戦場ヶ原さんが阿良々木くんに火憐ちゃんや月火ちゃんの格好してって言われたら?」
「針のないホチキスでその口を綴じるわ」
「うん、戦場ヶ原さん今日も絶好調に理不尽だ」


「でもそうね。阿良々木くんには悪い事したわね。お詫びに彼の好きな格好してあげようかしら」
「参考までにどんな格好?」
「裸エプロンか羽川さんの格好」
「……」
「裸エプロンか羽川さんの格好よ」


「……真面目に聞くけど、戦場ヶ原さん的にその選択はOKなの? 特に後者」
「いえもちろん彼女として色々思う所はあるけれど、とにかくあの男羽川さんを好きすぎるのよね。本当、たまにひどい目に合わせてやりたくなるわ」
「珍しく戦場ヶ原さんが理不尽じゃない怒りだ」


「でも発想を変えたのよ。あの男の目が、例えばスクール水着が似合うちょっとおとなしめの女子中学生に向けられているようなら死ぬよりひどい目にあわせてやった所なんだけど」
「(……戦場ヶ原さん、千石ちゃんと本当にあった事ないのかしら)」
「でも相手は羽川さんなのよ。羽川さんじゃ仕方ないわ。だって羽川さんおっぱい大きいし可愛いもの」
「いえちょっと待って何か話がおかしい」
「私、羽川さんの為なら毎朝お味噌汁作るわ!」
「そこに入れる名前は阿良々木くんにしようよ!」


「毎日一緒にだって寝られるわよ性的な意味で!」
「どうしよう戦場ヶ原さんが手遅れだよ!」
「まあそういうわけで羽川さん。あなたが相手なら望む所だから、やるなら正々堂々阿良々木くんを誘惑してね」
「そうだね。阿良々木くんの心に隙間出来始めたら、堂々と広げて滑り込ませてもらうね。でも私を狙うの禁止」
「えー」


 


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