闇鍋。


 旧雑記に載せていた小ネタ群です。
 日常の1シーンを切り取ったり、本当にふってわいたSSにならないようなネタを書いてみたり。
 つまりはジャンクボックスと言おうかそんな所。

 ちなみに◇のついているネタは、「結婚協奏曲」の挿話として想定していたり。

 あと、No.3<嫌い嫌いも……>は、SS「嫌い嫌いも好きのウチ」の元です。
 これは「不夜城の夜」様にお送りさせて頂きました。



No.1 <初めての日>(月姫 ◇)
No.2 <落葉>(月姫 ◇)
No.3 <嫌い嫌いも……>(月姫)
No.4 <遠野麻雀>(月姫 ◇)
No.5 <姉妹>(月姫 ◇)
No.6 <イレギュラー>(Fate)
No.7 <プロジェクトぺけ その1>(月姫)
No.8 <プロジェクトぺけ その2>(月姫)
No.9 <姉妹の触れ合い>(月姫 ◇)





<初めての日>



 じっと眺めてみる。
 わたしの隣で寝息を立てている、愛しくてたまらない男の顔を。
 体の火照りは今だ抜けない。
 所々に残る赤い痕。彼の証。彼の物にされた証。彼に愛された証。
 いつもより激しかった。でもイヤじゃなかった。
 組み敷かれ、荒々しく乳房を、お尻を揉みしだかれた。
 かと思えば、優しいキスが背中に。首筋に。そして唇に。
 まるで獣のように。あるいは紳士のように。
 激しく、そして繊細にわたしを奏で鳴かせる演奏者。



「どうしたの? 今日は何かいつもと違う」

 そう問いかけた私に、彼はにっこりと笑って言った。

「だって今日はお前と初めて過ごす誕生日だろ?」

 ああ、そうか。今日はわたしの誕生日だったっけ。
 あれ、でもおかしい。

「初めてじゃないよ。だって、去年もこうして一緒に居てくれた……」

 最後まで言わせてもらえなかった。
 わたしの唇が、彼の唇で塞がれてしまう。
 潜りこむ彼の舌で火傷してしまいそう。伝わる思いに、そっと自分のを絡めて応える。
 はしたない水音が部屋に響いて、壁に吸い込まれていく。
 どれほど経ったんだろう。糸を引き、離された唇からゆっくりと紡がれる彼の言葉。

「去年は恋人だったけど、今年は違うだろ。俺とお前は結婚するんだから、婚約者同士として初めてなんだ」
「そうなの? なんか変な感じ」
「変でもなんでも、そうなんだ」

 ちょっと拗ねたように言う、彼の顔がなんかとても可愛い。

「じゃあ、来年も初めてなんだね」
「ああ」
「でも再来年は?」
「きっと何か新しい出来事が起きるから、やっぱり初めてなんだよ」
「ずっと,ずっと初めてなの?」
「いつも新鮮な気分になるから、良いだろ?」

 いつもわたしの事を「ばかおんな」とか「子供みたい」だとか言うのに。
 そんな事を真面目に言う彼が今日は何か子供みたい。
 どうしようもなく愛おしい気持ちがこみ上げてくる。
 なかったはずの、わたしの大事な大事な宝物。
 彼から貰った心が、とても、とても熱い。

 だから心の求めるままに、彼の上にのし掛かってしまった。。

「お、おい」
「たまには良いじゃない。今日はわたしが好きなようにしちゃうんだから」




 隣で寝息をたてている、その唇に優しく口づけて。
 彼の胸に顔を埋めた。
 まだ残る火照りを冷まして、そして消える事のない温もりをもらうために


おしまい






<落葉>


「おはよう、琥珀ちゃん」
「あら、おはようございますアルトルージュさん。この時間に外に出てらっしゃるだなんて、珍しいですね」

 彼女の言葉に、私は苦笑を浮かべる。
 吸血鬼は夜の生き物。確かに朝起きだしてくるなんて、人間から見れば珍しいかもしれない。

「ん、ちょっとね、散歩してみたくなったのよ」

 その言葉は嘘じゃない。
 憂鬱な太陽も、この季節は随分と元気を無くしているし。だから、たまにはこうして外を歩いてみたくなる。
 私と彼女の間を風が吹き抜けた。
 スカートの裾が揺れ、木の葉が舞い上がる。

「あっ! もう、折角集めたのに…」

 箒を抱えて、流れた風を恨めしげに見つめる琥珀ちゃん。見れば、彼女が集めたであろう落ち葉の 山が、半分ほど崩れてしまっていた。
 ひょっとして。この家の庭の落ち葉、彼女一人で掃除しているのだろうか?
 顔を上げて、ぐるりと見回してみる。勿論私の城には及ばないけれど、敷地はかなり広い。女の子一人では些か手に余る規模だと思うのだけれど。

「まさか。手の回る、屋敷の周りだけですよ」

 疑問が顔に出ていたのだろうか、琥珀ちゃんがぱたぱたと手を振って笑う。

「だとしても大変じゃない? こういう所にこそ人を入れれば良いのに。そういうお金に不自由してるような家には見えないのだけれど」
「まぁ、その辺りは秋葉様の心持ちですから。それに落ち葉掃除も楽しいんですよ? 後の楽しみも ありますし」

 楽しみ? この集まった落ち葉が、何の役に立つというのかしら。

「何か作ったり、引き換えたりするのかしら?」
「ん〜、作ったり、というのは近いかもしれませんね。焼き芋ですよ」 「やき、いも?」  初めて聞いた単語だった。
 日本語の意味から考えるに、芋を使った何かの料理だとは思うのだけれど。

「アルトルージュさんは食べた事は……無いですよね」

 そう言って、照れたように笑う琥珀ちゃん。口元を緩めて、首を横に振った。
 
「べイクドポテトとは違うのかしら?」
「ええ。使うのはジャガイモじゃなくてサツマイモなんです。とっても美味しいですよ」
「ふふ、面白そうね」

 サツマイモってのも何なのかよく分からないけれど、新しい経験をすることは嫌いじゃない。ここは御相伴に与る事にしようかしら。

「アルトルージュ様もお食べになられます? それでは、もっと落ち葉を集めないと」
「ん、それなら私も手伝おうか?」

 目的があったわけじゃない、ただの散歩だもの。
 そんな寄り道をしたって良いと思う。
 だけど、私の言葉に琥珀ちゃんは困ったような笑顔を浮かべてきた。

「そのお気持ちは嬉しいのですけれど。お客様にそんな事をさせたら、私が秋葉様に怒られてしまい ますから」

 ああ、それもそうね。秋葉ちゃんそう言うのに厳しそうだし。
 私の前では何も言わないだろうけど、あとで琥珀ちゃんが軽くとはいえ叱責を受けたりしたら可哀想。
 手伝うつもりで、琥珀ちゃんに余計な苦労をさせちゃいけないわね。

「うん、そう言う事なら。邪魔しないように離れているわ」
「申し訳ありません。それでは、出来ましたらお呼びいたしますね」

 お散歩でしたら、屋敷の離れがお勧めですよ。
 そんな彼女の声に従って、そちらに向かう事にする。

 あの落ち葉と、サツマイモ。一体どんなものが出来るのだろう。
 とても気になる。でも、ちょっと楽しみ。
 作るのが琥珀さんだから、きっと素敵な料理になるんだろうな。

 そんな近い未来に思いを馳せ。
 私の足は軽やかに駆け出したのだった。



おしまい






<嫌い嫌いも……>


 何でこんな事になったのだろう。
 公園で志貴を待っていたら彼女がやってきて。
 お定まりの言い争い。いつしかそれが殴り合いになり、力尽きて倒れこんで。
 気がついたら、わたしの上に彼女がのしかかっていた。
 その気になれば跳ね除けられる筈なのに。馬乗りになる彼女の体の重みがどこか心地よくて。
 法衣を脱ぎ捨て覆い被さってくる様を、ただ見つめていた。


 わたしのより少し小ぶりかもしれない。でも、張りのある形良い双丘。
 その先が、これでもかと尖り硬くなっているのが分かる。

「どうして、抵抗しないんですか?」

 吐息が触れそうな程近く。寄せられた彼女の顔。
 その手が、セーターの中に潜りこんできてる。

「何でだろうね……でも、嫌じゃないんだ」

 その言葉は嘘じゃない。
 志貴以外の人間に、しかも普段なら絶対一緒にいたくない人間の筈なのに。
 彼女の手が、吐息が、何故か心地よかった。
 だから、もっと近づけば、もっと心地よくなるかもしれない。
 そう思って、彼女の背中に手を回して。
 そのまま、ぎゅっと引き寄せる。

「きゃっ」

 驚きの声を漏らす彼女の唇を、塞いでしまった。
 軽く、舐めるように唇を這わせた後、下唇を甘噛みし、薄く開かれた隙間を舌で突つく。
 艶やかなノックは、正しく報われた。
 開かれた口に、わたしの舌が滑りこむ。待ち構えていたかのように絡み合ってくる彼女の舌。
 志貴に教えてもらった技法を、志貴を取り合う敵に披露する。
 その倒錯した状態に、頭が痺れそう。

 舌と舌が、まるで一つの生物のように、絡み合い、唾液が糸を引いて溶け合う。
 わたしと彼女が一つになり、互いの体液を移し合ってる。
 これはセックスだ。口と口、女同士だけど。何も変わらない。
 それに気付いて体が火照る。わたしの乳首も痛いくらいに勃起してしまってる。
 しかしそれが触れるべき布の感触を感じず、眉をひそめた。
 ああ、そう言う事か。
 口付けに没頭する内に、何時の間にかセーターが脱がされていた。ひやりとした空気が、わたしの体を撫でていく。
 彼女の体が、直に触れ合っている。
 その部分だけは熱く、柔らかく、そして例えようもなく気持ちが良かった。

「人に……見られちゃうよ」

 口だけはそう言って、嫌がる素振りを見せてみる。
 だけどそんな思いなど、向こうにはお見通しだったみたい。

「誰も来れませんよ、ここには」

 予定調和の答えを返して、彼女の唇が、わたしの唇から離れていく。
 名残惜しい、そんな思いで伸ばされたままのわたしの舌に軽く口付け、そのまま喉を撫でてゆく。  鎖骨を通って、乳房をしばしねぶって、そしてその頂きへ。
 最初は、甘く、蕩けるように。
 優しくもどこか物足りない刺激に、焦れるように体をよじろうとする。
 その刹那。痛いほどの刺激が、そこを中心に体を走り抜けた。
 違う、これは快楽。
 乳房に歯を立てられて、背を弓反らせてその気持ち良さに浸る。
 そこに手を差し込まれ、引き起こされた。
 太ももに、彼女が腰掛けてくる。そんな形で向かい合う。


 彼女は何も言わず、ただ深い、空のような目で私を見つめてくる。
 潤んだ瞳に浮かぶのは、いつもと違う色。
 それは良く知っている色。
 わたしが、志貴に向ける瞳の色だったから。
 だから志貴にしてもらったように。
 彼女の顔を引き寄せて、深く口付けた。


おしまい






<遠野麻雀>


「ロン、メンタンピンイーペードラドラ、と。あ、裏ドラも二つ乗りましたね。あは〜、倍満ですけど志貴さん。生きてますか〜」
「…………残り8000点だったんですが。無理ですって」

 満面の笑顔で手を伸ばしてくる琥珀に、がっくりと項垂れて志貴は全ての点棒を差し出す。

「もう、兄さんったら! 何もトップ目の琥珀に打ちこむ事ないじゃないですか」
「仕方ないだろ、リーチ掛けてたんだから回避不可だって。俺だってラス親で6順目満貫聴牌だったんだから、勝負かけるさ」

 悔しそうに兄を見つめる秋葉に志貴は抗弁するが、臍を曲げた妹様の機嫌は悪いままであった。

「私も逆転手を張っていたんですよ。まったく……」

 悔しそうに自らの手を広げる秋葉。確かに綺麗にソーズで染め上がった手。ツモ上がりでも逆転トップになれていただろう。

「あら。秋葉ちゃんももう染め上がってたのね」

 そう言ってアルトルージュもぱたりと手配を倒した。
 やはり美しく染まったマンズの清一色……

「うぁ……アルトルージュさん、それって九蓮宝塔じゃないですか……しかも九面待ち……」

 驚愕の視線でそれを見つめた志貴は、お手上げと言わんばかりに両手を広げた。

「志貴負けちゃったの? じゃあ次はわたしね、わたし!」

 彼の後ろで勝負の行く末を見守っていたアルクェイドが、こらえ切れないようにぴょこぴょこ飛び跳ねて手を上げる。

「では、ニ着の私が抜け番ですね」
「じゃあ俺も……」

 すくっとたち上がる秋葉に続いて、志貴もたち上がろうとするが、がしっとその手を捕まれる。

「だめよ、志貴くん♪ 一着と四着は固定なんだから」
「そうだぞ、志貴.。わたしとやる前に逃げる気?」
「いや、俺もうこれ以上予約を入れられても……」

 にこっと彼に微笑みかけるアルトルージュ。むぅ、と頬っぺたを膨らませるアルクェイド。
 二人に睨まれて、消え入りそうな声でそれでも抵抗してみる志貴。

 一着の人間が四着の人に何か一つお願いを聞いてもらう。
 そんなルールで始まったこのお正月麻雀大会、志貴は見事に負け負けだった。
 もはや空いた日は誰かのお願い事で一杯.という感じ。

「それではこうしましょう!」

 素敵な事を思いついた、と言わんばかりに手を叩く琥珀。
 ぞくり、と。志貴の背中を冷や汗が流れる。
 やばい。危険だ。聞いてしまったら負けだ。言わせてはいけない。

「琥珀さ……」
「リアル脱衣麻雀です。1回誰かに打ちこんだら、1枚脱ぐ.。ツモられたら皆1枚脱ぐ。上がった人は一枚着る。どうですか?」

 ああ無情。
 ぱくぱくと、でない声と行き場のない手を向けたままの志貴に向かって、いつもの笑顔を崩さない琥珀。
 一方、彼女の提案を耳にした女性陣の目の色は明らかに変わっていた。

「賛成、面白そうですもの♪」
「じゃぁ、志貴から当たれば志貴を脱がせるのね? 面白そう〜」
「ちょっ……琥珀さん!」

 愕然として振り向く志貴に向かって、にっこり微笑む琥珀。

「あら、志貴さん。勝ち続ければ問題無しですよ?むしろ嬉しい嬉しいサービスタイム。頑張ってくださいね」
「いやそれ絶対無理……」
「なにを言ってるの琥珀! そんな破廉恥な事…」

 顔を赤くして琥珀を怒鳴りつけようとする秋葉。その姿に救いの女神を見た志貴だったが、つつー と擦り寄って琥珀が彼女の耳元に何か囁く。
 それを聞いた秋葉の顔が更に赤くなり、そして、

「……そうね。お正月ですものね。そう言う余興も面白いかもしれないわね」
「じゃぁさっきトップの琥珀ちゃんが仮々親ね」
「任せてください♪ さぁ、覚悟してくださいまし、志貴さん」
「志貴〜、すぐに裸にしてあげちゃうからね」
「兄さん、次の半荘が楽しみですね……ふふふ……」

 ……終わった。
 がっくりと項垂れる志貴。
 間違いなく三対一だ。いくら有彦と鍛えたキャリアがあったと言えども所詮素人に毛が生えたようなレベルだ。勝てるわけがない。
 既に半ば燃え尽きている彼をよそ目に、盛り上がる女性陣。
 傍で見ている翡翠もどこか期待した視線で志貴を見ている。


 正月の夜は、随分と彼には長そうであった……


おしまい






<姉妹>


 あら、珍しい。
 秋葉に呼ばれて、代わりのお茶を手に居間に戻った琥珀の目に映ったのは、笑い声を上げて会話 を楽しんでいる、三人の女性の姿だった。

 落ちついた微笑みでカップを傾けるアルトルージュ。
 場を明るくする笑顔を振りまくアルクェイド。
 そして、それに釣られるように秋葉も、常には無い笑い声を上げていた。

 三人とも血が繋がっていない。
 それどころか普通の人間ですらない。
 だけど、その様は本当に血の繋がった仲の良い姉妹のようで、お盆を抱えた琥珀の琥珀の口元も 自然とほころんでいた。

 アルクェイドと秋葉は良くケンカをしている。
 今まで何度となく、琥珀はその光景を目にしてきた。
 そんなに反りがあわないのならば、最初から顔を合わせないようにすれば良いのに。
 遠野家は広い。それを望むならば可能な事なのである。琥珀はそう思い、主にその旨をそれとなく 伝えた事もあった。

 しかし秋葉は苦笑を浮かべて、首を横に振ったのだ。

 その顔を見て、琥珀は気がついた。
 ケンカが出来るという事は、お互いに相手の心に触れていると言う事。
 それが良い事なのか悪い事なのかは問題では無い。大切なのはお互いに相手に踏みこむ事を恐れない付き合いをしていると言う事だ。
 だからこうして、時には心から笑い合うことも出来るのだろう。

 本当に、素敵な光景ですね。
 聞こえぬほどの小さな声で、彼女はそう呟く。
 かけがえのない、唯一の肉親である翡翠。彼女と一緒にいて、こういう雰囲気になれるだろうか。
 一瞬考えてみて、分かり切った答えが導き出されたから。琥珀は頭を軽く振ると、その事を頭から 追い出した。


 今の自分が考えることじゃない。今の自分はそんな事を考えちゃいけない。
 だからエガオを浮かべて。ネジを巻いて。

「お待たせしました。お茶をお持ちしましたよ、秋葉様」


おしまい






<イレギュラー>


「――――告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

 視界が閉ざされる。濃密なエーテルが場を満たし、視覚は自らを守るために役割を放棄する。


 「誓いを此処に。
  我は常世総ての善と成る者、
  我は常世総ての悪を敷く者。
  汝三大の言霊を纏う七天、
  抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

 魔法陣に力が満ち、あふれ出す光が場を染め上げる。
 完璧な手ごたえに、思わずほくそえんだ。
 気力体力満ち溢れてる上に、魔力の流れも絶好調。これで最強のカードを引き当てなかったら嘘 というものだ。

 視界が戻るのがもどかしい。
 部屋を満たしていたエーテルが、一点に収束していく感触。それと共に私の体も感触を取り戻して いく。
 もどかしさに背を押されて、見開いた目に映ったその姿。
 それを認識した瞬間、間違いなく私の心臓は一瞬止まった。

 腰まで伸びるつややかな金色の髪は、まるで自ら光を放っているかのよう。
 大きく胸元の開いた白と蒼のドレスは、彼女のためだけにあつらえられ、彼女以外には触れる事す ら許されない雰囲気を湛えている。
 顔に至ってはもはや表現する気にもなれない。
 彼女を造形した神は、おそらく命と引き換えにこれを作り上げたのだろう。
 その身の造形にはただの一点の曇りもない。
 あるわけがない。
 見るだけで分かる。彼女は王だ。ただそこに在るだけで世界を従える。いや、世界を変容させるのだろう。

 彼女は伏した瞳をそっと開き、ゆっくりとこちらを見つめてきた。
 その髪よりなお明るき金色の瞳が、私を睥睨する。
 卑小なる存在が、よくぞ王たる自分を呼び出した。そう言わんばかりに。

「戯れに呼び掛けに応じてみれば、ふむ、よくよく縁とは興味深きものよ。よもやこの身がこのような形を得る事になろうとはな」

 静寂する地下室に、彼女の声だけが冴えやかに響き渡る。
 ただそれだけで、部屋の空気が悲鳴を上げる。
 私の体も、心も重圧に砕け散りそうだった。
 目の前にいる者は、自分の手にははるか余る。その一声で冷徹にそれを告げられた。
 告げられたから、どうだと言うのだ。
 音がするほど強く、奥歯を噛み締める。
 折れかけた心に活を入れるべく、臍の辺りに力を込めて彼女の姿をにらみつけた。
 私は遠坂凛だ。勝つべくしてこの聖杯戦争に参加して、そのために彼女を使役する。
 どれだけ彼女が偉大な英霊だといっても、舐められるわけにはいかない!

「聞くわ。あなたが私のサーヴァントね。クラスは何?」
「ふむ。この身この場においてはそうなのであろうな。クラスとやらは……今我が身にこれが在るという事は、セイバーということかの」

 その左手にはいつの間にか一振りの剣が握られていた。
 柄元に、鍔口に端麗な装飾が施された片手剣。
 一目そちらに視線を送って――そして理解する。
 アレは、私なんかが到底理解できるような物じゃない。否、人類が理解してはいけないものだ。

「……それで、あなたの名前は何」

 声が震えてしまう。
 動揺を悟られるわけには行かないのに。魔術師は己を律することが第一条件なのに。
 その金色の瞳。
 人が持ちえよう筈もない瞳の色が。伝説の彼方に埋もれた一つの存在を思い起こさせる。
 まさか、そんな筈はない。
 いくら私でも、そんな者を呼び出せるわけがない。
 しかし、こちらの動揺を、恐怖を困惑をあざ笑うかのように。目を細めた彼女は、唇の両端を薄く吊り上げて、その名を形にした。

「この遊戯の観測者。朱い月と呼ぶが良い」


おしまい






<プロジェクトぺけ その1>


「無茶だ」

 悲鳴のような叫び。乱暴に頭をかきむしりながら、吐き出した男の言葉は、その場に集う者全員の意思を代弁していた。
 石造りの広間に置かれた円卓。十人ほどの男たちが、並べられた豪奢な椅子に身を沈めている。
 彼らの顔に共通して浮かんでいるのは困惑と苦悩。
 男たちの前に並べられている分厚い紙の束。それこそが彼らを悩ませる原因であった。
 流麗な筆致で綴られている文面に目を向ければ、書かれているのは一つの設計図であると分かる。
 順序だて、綿密な作業工程を書き込まれた青写真は、それぞれの段階において詳細なスペックを算出してある。ここから目的の物を組み上げる事など、彼らにとって児戯に等しい。
 ――常ならば。
 男の一人が忌々しげに計画書をテーブルに叩きつけた。鈍い音が部屋に響き渡るが、誰も咎める者はいなかった。

「設計部の連中は現場を分かっていない! 実際に作り上げる身になってもらいたい」

 眉間に深い皺が刻まれた初老の面持ちの彼は、紅く光る瞳を吊り上げ吐き棄てた。
 一同の中でもリーダー格に当たる彼にとっては、今までに数限りなく作り上げてきた筈の物。しかし今回要求された物は、彼の目から見て明らかに常軌を逸していた。

「ちょっとでもバランスが崩れれば即座に崩れうる。あれを作るというのはそれほどまでに難しい事だというのに! 一体何だ、この無茶を通り越して無謀な要求性能は!」
「……それが必要な事態に陥ったと言うだけでしょう」

 隣の男が静かな口調でたしなめようとするが、効果を上げたとは言い難かったようだ。

「陥ったからどうだというのだ。こんなイカレタ代物を作るのにどれだけ時間がかかるというのか。それも出来るのならば良い。徒に時を浪費した挙句、失敗作の山を築き上げるのがオチだ」
「……ではどうすると?」
「決まってる。つっかえせ、こんな物は!」
「……正式に上がってきた計画書ですぞ。何と言って取り下げを求めるというのですか」
「はっ! そんなもの決まっておる。"あらゆる面を考慮して、現在の設備と人員では作り上げる事は不可能である。制作部としては設計部に深慮と再考を要求するものである!"――ほれ、どこにも嘘はないぞ」

 口角に泡を飛ばしてまくし立てる彼の言葉に、他の男たちは沈黙で答えた。
 ある者は腕を組み、またある者は口元に手を当てて思索にふけるが、効果的な反論も別の意見も思いつく者はいない様子である。
 ただ一人を除いて。
 すっと上げられた手を見て、男の目がすっと細められる。

「僕はやるべきだと思いますよ」
「……ほう? 我々開発部はこんな無理無茶無策な要求にも唯々諾々と従う。貴公はそう言うのかね」
「逆ですよ。これは挑戦です。喧嘩といっても良い」

 心臓を凍てつかせるほどの冷たい視線もまるで意に介した様子もなく、手を上げた青年は立ち上がり、座をぐるりと見回した。いまだ少年と言っても通るであろうその顔には、隠し切れない興奮から来る赤色が浮かんでいた。
 今回新たにスタッフとして配属された青年である。その類まれなる才能のもたらした業績は男の耳にも届いていたが、それとこれとは話が別である。

「僕も含めて、今ここにいる十人は最高のスタッフです。後にも先にも、これほどの陣容はそろいようがない。そんな我々が挑戦されたんですよ? "作れるものならば作ってみろ"と。ならば作ってみせようではないですか」

 計画書を手に取り、青年は最初の一文を読み上げた。
 詠う様に諳んじたそれは、作るべきモノの名前。

「――良い名だ。本当に良い名前だ。我々はこの名にふさわしい物を作り上げる義務がある」

 爛々と輝く瞳は、狂気の熱に浮かされているかのようであった。
 しかし青年の次の言葉で、その熱は円卓全てに伝わっていく。

「我々で。我々の力によってこの世に呼び戻そうではありませんか。アルトルージュのようなまがい物ではない、真のブリュンスタッドを」

 ブリュンスタッド。
 一人が薄く呟く。つられる様にあちらこちらで声が上がる。
 それ自体が力持つ至高の言霊は、ここに居る者たちの心を揺さぶり燃え上がらせる。
 一人、また一人。立ち上がった彼らは、青年の差し出した手に己が掌を重ね合わせた。
 包まれる連帯の熱。目標を、輝く星を与えられた彼らにとって、立ちはだかった困難も極上の糧であるかのようだった。
 ただ一人を除いて。

「貴公ら、正気か?! 成功するわけがないぞ」

 男は青年を睨みつけ、指を突きつける。

「何事もやらねば分かりません!」
「そのレベルの話ではないぞ、これは! むざむざ資材を、いや貴重なる人材を浪費しようというのか貴公は!」
「僕に言わせれば、貴方のやり方こそが浪費なんです」

 青年の声は大きくない。しかしあまりにも直截な物言いに、流石の男も鼻白む。

「何ぃ、貴様……」
「我々は常に挑戦する生き物だ。安定を求めた時点で死んだも同然じゃないですか。今ここに機会が与えられた。これ以上ないほどの機会! これに背を向けて何が製作部だと……」

 青年の台詞は途中で遮られる。
 石畳を割り砕かんばかりの勢いで、男は立ち上がる。叩きつけた拳の下で、円卓が鈍い音を立てていた。

「責任というものを軽く考えるな若造! 「挑戦しました、失敗しました!」で済むほど世の中は軽くないのだ!」
「ふん、失敗を恐れて前に進まなくなる方がよほど恐ろしい!」

 困惑する他の者たちの様子など、二人の眼には入らない。
 互いに一歩も引く様子はない。
 当然だ。引く事など出来よう筈がない。
 青年は若く世の可能性を信じている。男は月日と経験を積み重ね、可能性の限界を感じている。
 歩む道は異なり、抱く志も異なる。衝突は必然であり、歩み寄る場所にも限界がある。
 場に沈黙が下りた。刹那が永遠に感じられるほどの緊迫感。
 それを打ち破ったのは男の方であった。嘆息と共に、かつての仲間たちに背を向ける。

「ならばやってみるが良い。この老骨に目に物を見せてみよ」

 男はそのまま振り返る事はなく、乾いた音で石畳を踏み鳴らし歩み去っていく。
 残された者たちは顔を見合わせ、深く頷きあう。青年もまた、口元を引き締め部屋を去る男の背中を目に焼き付けた。
 袂は分かたれた。もはや引く事は出来ない。
 投げ出す事も許されない。
 求められるのは完全なる結果を出す事。立ちはだかる壁は眩暈がするほど高く、そしてそれゆえに甘美な光を放っている。

 こうして、歯車は回りだした。
 後の世に「真祖の姫君」と称された、完全なるブリュンスタッドの後継。
 それを作るための、長く、そして険しい道のりが今動き出したのである。


おしまい






<プロジェクトぺけ その2>


 男は頭を掻き毟り、広げられた紙を無造作に丸めて放り投げた。
 部屋の一角には、同じ運命を辿っていた紙が堆く積み上がっている。

「無理だ、こんなもの出来る筈が無い!」

 悲鳴のような叫びと共に、男はフラフラと机に突っ伏してしまった。
 部屋の空気は男の気持ちを表わしているかのように重く淀んでいる。そこに、ノックの音が響き 渡った。

「……開いているぞ」

 怨嗟のような男の呟きに応えるかのごとく、樫木作りのドアが軋んだ音を立てる。そのまま一人の青年がゆっくりと部屋に入ってきた。

「どうですか、調子は?」
「見れば分かるだろう。最悪だ……」

 振りかえりもせず、吐き捨てるように男は言う。
 これは、相当に難題だ。青年は頭を振り、男の側に歩み寄った。

「計画は、貴方に掛かっているんです。貴方の描き出すデザインが、その能力を決めうる鍵となる。この計画が生きるも死ぬも、貴方の筆次第なんです!」
「ならば言わせてもらうがっ!」

 やおら立ち上がった男は力任せに机を殴り付けた。

「スペックは良い。美を求められるのも理解した。だが、しかしだ!」

 親の敵でも在るかのように、男は机の端に指を突きつけた。
 そこには男がデザインすべき対象の、詳細な指定書が積み上げられていた。
 その一番上の書類に、一際太く大きな文字で書きこまれた一文。男の指先はそこに突き付けられている。
 飾り気の無い文言で、誰が読んでも誤読を起こさないであろう指定。




 胸は巨乳で。




「何なんだ! 何で巨乳にしなければいかんのだ! これは戦闘兵器だろう? むしろ大きいと邪魔になるだけだろうが何故に巨乳なんだこの巨乳で要求される運動性能などどうやって満たせと言うんだ無茶を言うな―!」

 男の絶叫に、青年の瞳の奥が薄く昏く光を放った。

「貴方は分かっておられない。巨乳である事、それがいかに重要であるか」
「わかるか! 分かりたくもないわっ!」
「……アルトルージュ・ブリュンスタッド殿を御存知ですな?」

 その言葉に、男の動きが止まる。
 青年が口にした名前は、勿論覚えのある名であった。
 否、真祖でアルトルージュの名を知らぬものなど存在しない。

「……あの出来損ないの器が、一体どうしたというのだ」

 苛立たしげに男が呟く。そこにははっきりとした侮蔑が込められていた。

「はて、確かに器としてはまがい物であったかもしれませんが、彼女は歴とした芸術だと思いますがね。まぁそれは良いのです。重要なのは彼女の生い立ちなのですから」
「……お隠れになられた王と、王の「子」である死徒の間に生まれた。そう聞いているが」
「ええ、それは間違いではありません。ですがその死徒が何故選ばれたのか、御存知ですか?」
「それは……その死徒が数多の王の『子』の中で、最も母体に相応しいだけの力を秘めていたから、だろう?」
「違います」

 キッパリと首を振る。その様に眉を顰めた男が、訝しげに、

「ならばなんだという?」
「簡単です。彼女は巨乳故に、王の目に叶ったのですよ」

 神妙に、そう言い切った青年に対して男は絶句した。
 絶句以外何が出来るというのか。
 畏れ敬われた絶対者。あの月の写し身とも言える王が、まさか巨乳マニアだったなど。

「正確に言うと、王の性癖を耳にした彼女は、巨乳を装ったんです」

 幻想が崩れ、今だ立ち直れない男とは対照的に、青年はどこか嬉々として真実を披露していく。

「力だけであるならば、彼女に並ぶ立つ者などいなかった。最初の二十七人の内の一人でもあったのですからね。しかし彼女は唯一つ、豊満な乳房だけは得る事は出来なかったんです」
「いや、その。貴様何を言っているのかと……」

 男のかすれた制止の声など耳にも入らぬ様子で、青年は熱っぽい瞳で『真実』を披露していく。

「立ちはだかる巨乳の后候補はあまりに多かった。そこから王の関心を勝ち取るため、彼女は禁忌に手を出した。自らの持てる魔力を駆使して、完璧な巨乳を自分の胸に投影したんです」
「………………あー」

 男は頭を抱えた。
 むしろこの場にいてはいけない気すら覚えている。
 ――すると何か? 我らが王は偽巨乳に騙されて、アルトルージュを作ったというのか。
 男は生まれて初めてアルトルージュに対して悲哀を覚えた。
 父の目が節穴だったのか、母が歴史に名を刻むほどの見栄っ張りだったのか。どちらにせよ真実を知ったら、一体彼女はどんな顔をするのだろうか。

「無論、禁忌の代償は大きな物でした。アルトルージュを産み落としたあと、彼女はあまりにも若すぎる死を迎えねばならなかった」
 まぁ、それはそうだろうな。
 男は疲れきった顔で重い溜息をついた。
 超えてはいけない自分の限界も超えたのだから。むしろアルトルージュを産み落とすまでそんな物を維持しきった事に脅威を覚えるより他ない。

「お分かりいただけましたか? かように真祖にとって、そして女にとって巨乳という物は重要な要素なのですよ!」
「……ああ、良く分かった」

 青年がいろんな意味でとんでもない奴だと言う事が。
 心の叫びを飲みこみ、男は力なく机に向かった。
 やるしかない。
 誇りにかけて、この『娘』を巨乳にしなければならない。
 貧乳を儚んで投影に走られる……そんな未来だけは断固阻止せねばならない。それが、亡き王に対するせめてもの供養であろうから。




おしまい






<姉妹の触れ合い>


「んー、いい気持ち」

 本当に気持ち良さそうに呟く『姉』の声が、風呂場に響いた。
 湯船に肩まで漬かり、蕩けそうな笑顔を浮かべてる姿をちらりと見やる。
 こうして見ていれば、背も外見も晶と変わらぬほど幼いというのに。私が想像もつかないほど長い年月を生きてきた存在だと誰が思おうか。
 その気になれば人の命など蝋燭の炎を消し去るよりもたやすく奪い去れる相手が、こうして湯船で緩みきっていると言うのは、間近で見ていても納得しにくい。
 おそらく私は史上でも稀に見る珍景を目の当たりにしてるんじゃないだろうか。

「秋葉ちゃんも入ったら? 良い湯加減よ」
「いえ、その。まだ髪を洗わないといけませんから」

 アルトルージュさんの誘いにあわてて首を振る。じっと見ていたのを咎められたみたいで、少しばつが悪い。
 と言うか。
 何故に彼女は私と共に風呂に入っているのだろうか。
 確か先に入っていたのは私の筈なのに。いつの間にか風呂場に入ってきて、それが当然であるかのように湯船に浸かっている。
 掛け湯はしたのだろうか、とか埒も無い事を思い浮かべたけれど、そもそも問題はそこでは無い気がする。かなり激しく。

「あの、アルトルージュさん」
「ん、なぁに秋葉ちゃん?」
「その……何故一緒にお風呂に?」
「何でって? だってそれが当然じゃないの?」

 何でですかっ!
 そんな叫びが喉元まででかかったが、かろうじて声にならなかったのは、こちらに向き直った彼女が本当に不思議そうな顔をしていたからだ。

「だって琥珀ちゃん言ってたわよ? 日本のお風呂は親睦を深めるコミュニケーションツールだって」

 ……琥珀め。
 悪戯心を含みまくった忠実な侍女の笑顔を思い浮かべて、沸き起こる頭痛に思わず頭を抑えた。
 何で日本文化に疎い人相手に、間違ってないけど正しくない事を教えるのだ、あれは。

「いえ、その、確かにその理解は全て間違っているわけではないのですけどそれは主に公衆浴場などでの話ですから、こういうプライベートなお風呂場では主に一人で入るのが基本と言いますか……」
「あー、秋葉ちゃん、ひょっとして照れてる?」
「そうじゃなくてっ!」

 いや、それも多分にあるけれど。

「どうせアルクェイドとはもう一緒にお風呂入ってるんでしょう?」
「入ってません!」
「ん、じゃあ私が初めてなんだぁ」

 そう言った彼女の瞳には、何故だろうか、とても剣呑な光が浮かんでる気が、した。

「ふっふっふ、観念してお姉さんに背中を流させなさい!」

 獲物を見つけた猫のように目を細めたアルトルージュさんが、怪しげな手つきとともに湯船から這い上がってきた。
 全く、髪の色も姿も違うというのに、何でこういう時の顔はアルクェイドさんとそっくりなんだろうか。それがブリュンスタッドに流れる血なのだとすれば、迷惑この上ないんだけど。
 じりじりと後づさるる私。
 じりじりと間合いを詰めてくるアルトルージュさん。
 これは、言い逃れも逃走もどうにも無理な様子。

「……はい、それではお願いしますね、アルトルージュさん」
「姉さん」
「は?」
「せっかくだから姉さんって呼んで欲しいな、秋葉ちゃん」
「……はい、お願いします、アルトルージュ姉さん」
「ん、よくできました」

 そう言って花の綻ぶような笑顔を見せた彼女は、やっぱりアルクェイドさんの姉に相応しい美しさだった。
 満足そうに寄ってきた彼女が、泡立てたシャボンを手に乗せて、私の背中を撫で下ろしてくれる。
 その感触が思ったよりずっと心地いい。

「ほんと、綺麗な肌してるね。洗ってるこっちも気持ちいいわよ」

 感心したように言ってくれる、その言葉に嘘は感じられない。
 正直肌を褒められるのは嬉しいし、少し照れくさくて顔が熱くなっってしまった。
 まぁたまには、こういうお風呂もいいのかもしれない。
 観念して、『姉』の手に身を委ねて。私はゆっくりと目を閉じた。



「んー、ここはまだまだ成長の余地あり、かしらね」
「ちょ、どこ触って……っ! ああっ! そこはダメ、ああ……」



おしまい?