まくかん。




 腕の中で荒い息を付く金髪の少女。士郎はその頤を持ち上げて、その桜のような唇に優しく口づける。しかし愁いを帯びた彼女の瞳は、悲しげに伏せられたまま。
「どうした、セイバー。何か嫌だったりしたか」
「いえ、シロウ。あなたの唇は心地良い。あなたの舌を入れられると、はしたなくも私の体は火照り、舌で応えずに入られなくなる」
 そのまま彼女は士郎の胸に腕を回して組み敷くように倒れこんだ。その拍子に彼女の身に掛かっていたシーツがめくりあがると、白い絹のような柔肌が窓から差し込む月明かりに晒される。
 闇の中、自ら光り輝いているかのようなその裸身に、思わず士郎は息を飲んだ。
 たとえつい先ほどまで自らがあられもない声を上げさせていた相手の裸といえど、こうして一拍をおいて見れば、改めてその美しさが目を潤していく。
 指が吸い付くようなしっとりとしたきめ細かい肌。少年のように華奢で小柄な体は、しかし確かに女性の曲線と柔らかさを描いている。薄い胸に比して柔らかさと瑞々しい色気をかもし出す、背中から臀部にかけての線。それは薄闇に一際鮮やかに浮かび上がっていた。
 想いが胸に高まり、士郎はのしかかる少女の背に手を回してきゅっと抱きしめる。それに応えるように彼女は目を伏せ、男の胸にその頭を預けた。
 しばし士郎のぬくもりを身に受けていたセイバーは、顔を上げ、上目遣いでじっと彼の瞳を見つめ始める。
 しかしその声に熱を含んで、歌うように士郎に囁きかけた。
「あなたの指が私の体を滑るだけで、私の体はわなないて。それだけで我が胸は期待にふるえ、このようになってしまう」
 士郎の胸に擦り付けられるセイバーの乳房。慎ましやかなふくらみの先、桜桃のような二つの突起は硬くしこり、士郎の胸をゆるやかに掻き撫でてくる。
「この身は一人の騎士。あなたのための剣なれば、望むならばどのような想いをも応えましょう」
 そこで言葉を切ったセイバーは、体を引き上げて士郎の顔に自らの顔を寄せる。薄紙一枚ほどの隔たり。互いの吐息も火照る熱も、隠しようもなく伝わってくる。
 そしてセイバーは、濡れ細められた目をしかと見開き――射殺すような視線で士郎を刺し貫いた。

「ですが! いくらなんでも毎回毎回セックスの度におしりにしか挿れないってのは一体どういう了見なんですかシロウ!」

 ぶっ!
 思わず噴出したシロウを尻目に、セイバーの口も怒りもヒートアップしていく。
「そんなに私のアソコには魅力ありませんか? 処女ですよ処女! 男の人垂涎の的なのではないのですか?! なのに毎回毎回毎回毎回! 確かにわたしは排泄とかしませんから綺麗なもんでしょうけどだからと言ってそういう問題じゃ無しに何でおしりなんですかシロウ!」
「いや、その、ほらだって……」
 おしりの方が好きなんだ。士郎は喉元まで競りあがったその台詞を全身全霊を込めて飲み込む。
 死ぬ。言ったら死ぬ。間違いなく死ぬ。
 しかし代わりの言い訳も思いつかない。ある訳が無いのだから思いつくわけも無い。
 それでも彼は探す。全力で探す。投影の工程すっ飛ばしなんて比でない速度で探す探す探す――見つけた!
  「ほ……ほら! セイバーは王様だろ。そういう人の初めてを破るってなんか気が引けるというか恐れ多いというか…」
「それでおしりに挿れる方がよっぽど鬼畜でしょうがー!」
 駄目だった。
「あれですか、シロウはおしりマニアですかむしろ前の穴なんかより後ろの穴があれば万事OKですかそうなんですねこのど変態。むしろ男でもOKなんですかそうでしょう!」
「まてー! それは激しく誤解だセイ……」
「ああ、凛もきっとシロウに後ろを犯されて。いくら「前でして……お願い士郎……」って言っても聞く耳持たずにひたすら後ろを攻め立てるシロウ……何故ですか! あなたの正義はどこで歪んでしまったのですか」
「ちーがーうー! 凛にそんな事はしていないー!」
「なら尚の事なんで私にはおしりだけなんですか?! そうですか薄い胸だからやっぱり男と勘違いしてますかこんちくしょうめー!」



 ――いくら士郎が弁明してみても、自ら積み重ねた歴史の重みには勝てるわけもなく。
 こうして衛宮邸の夜は、いささか人に聴かせるのは忍びない言い争いと、窓ガラスが割れる音と共に更けて行くのであった。



膜姦 了