かつて遠野は自らの野望のため鬼と交わりその身を混血とした。

 その鬼とはどのような存在だったのか……今となっては知るものはいないが……

 生き残りは確かに存在する。これはそんな鬼と殺人貴達の物語

 鬼は復讐のために生き、殺人貴はかけがいのない日常を守るため蒼き魔眼を解き放つ。

 ……活目せよ……悲しき復讐者を……





〜夢幻の闇〜
 

プロローグ  「鬼」


作 過ぎ去りし流星



 『獣王の巣』『アカシャの蛇』『ワラキアの夜』……二十七祖の中でも滅ぼすことが最も難しい

とされる彼らが滅んだ場所 極東に位置する日本、三咲町に一人の男が訪れた。

 名を『十夜観月』という。黒に細かい白い縦線の入ったスーツ、黒いYシャツ、紅いネクタイ

姿の薄い茶髪の男。タバコを吸いながら歩くその姿は一見すれば普通の新入社員だろう。

 だが、彼はれっきとした鬼である……

 鬼と言ってもその姿は我々が考える頭に角を生やし、赤黒い、鋼のような筋肉に覆われた

存在ではない。彼らは生まれながらにして人間の姿だが、角は存在する。

 それは頭にではなく『武器』の姿として。

 彼が持つは日本刀。

 普段は次元の挟間にしまってある刀を抜く時。それは自らの一族の務め…『鬼』を討つ時。

 鬼とはもちろん一族の者が暴走した姿――ここでは『反転』した時と言おうか――も含まれ

るが、彼らが言う鬼とは人の負の感情が集まったモノを指す。

 多数のヒトの怨念、非業の死、稀にだが死者がそのまま鬼と化す場合もある。

 この鬼こそ童話の中に出てくる鬼そのものの姿だ。

 彼ら鬼の一族はこの者達の出現と同時に討ちに出る。そのため鬼の存在を知る者はいな

い。誰よりも疾く彼らが『殲滅』するためだ。

 鬼となったモノは自らの怨念を晴らすべく人を襲う……そして鬼に殺された人たちもその身

を鬼と化す。まるで吸血鬼に血を吸われた者が吸血鬼になるがごとく……

 彼らがその鬼を滅ぼす理由はたった一つ。

 怨念が怨念を生み出す無限回廊――鬼の増殖を防ぐため、自らの角が形作った得物を武

器に戦ってきた。

 その一族も今や生き残りは彼一人……

 遠野というニンゲン達に滅ぼされたといってもいい。

 その身を混血とし、人を超えしモノになる……その野望のために彼ら一族は捕らえられた。

 男は殺され、女はむりやり……

 彼らは抵抗しなかった。人間は殺さない……それが彼らの信念だったから。

 人間が好きだったから。

 『力』を使わなければ彼らも人と同じ銃弾でたやすく死ぬ存在。遠野にしてみれば拍子抜け

するほど楽な仕事だったであろう。

 生き残りは十夜観月ただ一人だった……




「まさか、この刻がくるとはな・・」

 自嘲気味に笑う。

「父上、母上、姉上、私は不出来です。こんなことをしなければ自分に納得できません」

「そう・・何年経とうとも」

 誰にともなく男は呟く。

「復讐・・・か」

 町中を歩く観月が目指す場所は……遠野の屋敷。




 そのころ遠野家では……

「まったく!日曜とはいえこんな時間に……さすがは遠野家の長男ですね」

  昼近くに目覚めた志貴が秋葉に小言を言われていた 。

(は〜あ、相変わらず話が長い・・・)

 かれこれ30分は経つのだから彼に同情したくもなる。

「聞いてるんですか!?兄さん!?まったくこれだから・・・・」

(やべ、自爆したッ!)

少し余所見をしただけだが秋葉は見逃さなかった 。

(これで説教タイムは延長だな・・)

 シオンなら「当然の結果です」とか言うんだろうな……

 志貴は今は遠くアトラス院にいる友を思い浮かべた。

(だれか客でも来ないかな・・・) などと考えている時、



ピンポ〜ン



呼び鈴が鳴った。

「あら?誰かしら?翡翠、出てもらえる?」

「はい。かしこまりました、秋葉様」

 翡翠は一礼し、玄関に向かった。

「運がいいですね。とりあえず話しはいったんお終いにしてさしあげます」

「助かったよ。でもアルクェイドが今の客だとしてもいきなり怒るなよ?」

「心配にはおよびません。あの方に呼び鈴を鳴らすような常識はないでしょうから」

 きっぱりそう言う秋葉 ここはアルクェイドの恋人としてフォローを……

「……確かにいつも部屋に直接来るな……」 許せアルクェイド!フォローが見つからんッ!

 さて、玄関に向かった翡翠は……

「本日はどういったご用件でしょうか?」

「少し当主にお話が」

答えるはスーツ姿の男。

「失礼ですが、お名前は?」

「申し遅れました。私、十夜観月と申します」

 復讐鬼は遠野の扉を叩いた。

 復讐の幕はこのとき開いた……




続く


 過ぎ去りし流星様より、「硝子の月」に寄贈していただきましたSSです。

 遠野がその力を得るために取り込んだ『鬼』。その生き残りが主人公と

言う、なかなかに興味をそそる展開です。今回はプロローグと言う事です
が、これから話はどう転がっていくのか。楽しみにさせて頂きたいと思い
ます。

 それにしても、今回がSS初書きと言う事だそうですが、なかなかに上手
いですね。俺も負けていられません!

 では過ぎ去りし流星様、本当に有難うございました。続きも楽しみにさ
せて頂きます〜