第三夜  郊外 峠道にて


 「現状はどうなっている」

  ナルバレックは現場に着くなりそう言った。

  深夜。ナルバレックの目の前には狭い峠道に無残に横転しているバスが見える。

  その周りには警察官など現場検証の人たちで一杯だ。

  だが、その中にカソック姿の人もちらちら見える。

  そう、ここに居るのはただの警察官たちではない。

  対‘魔’用の特殊任務の警察官たちである。

  魔が起こす事件現場は通常の事件現場とは違い独特である。食い散らされた死体や大きな爪で引き

 裂かれた死体。体液が一滴も残ってない干乾びた死体。現場も魔の瘴気に満ち溢れていて、居るだけで

 気分が悪くなる。このように普通の現場検証法では対応できないのだ。

  ゆえに退魔組織では警察にリンクを張り、このような怪事件には専門の警察の部署を動員する。

  ヨーロッパはかなり徹底していて情報操作や規制などは行き届いている。蛇足だが、日本も同じよう

 に対‘魔’用の部署。特別資料研鑚課がある。が、あまり他の退魔組織と連携が取れているというわけ

 ではない。足並みが悪く、三咲町の事件ではかなり後になるまで特死課(特別資料研鑚課)でなく

 普通の警察が事件を担当していた。さらには退魔組織も出るのが遅れたのだ。まあ、これには色々

 と理由があるのだが(遠野家が絡んでいる)

  それはともかく、ナルバレックが現場を視察していると、背の低い、少し太ったハゲ男が汗を

 ハンカチで拭き吹きしながらやって来た。カソックを着ているところを見ると教会関係者に見える

 のだが……。

 「これはこれは、ナルバレックさま。このような所に起こし頂いて恐縮です。私、聖歌騎士団の──」

  ハゲ男はもう冬が近く寒いのにしきりにたるんだ頬をハンカチで拭いていた。ナルバレックはハゲ

 男の前口上途中にじろりと睨んで黙らせる。

 「ひっ──」

  ハゲ男はたちどころに怯えて黙ってしまう」

 「私は現状を説明しろといった。下らん前置きはいい、さっさと説明しろ」

  ナルバレックの一喝にハゲ男は慌てふためいて、まともに言葉を発しない。ナルバレックが、チッ、

 と舌打ちをすると、

 「あまりいじめないでください。ジョゼフ神父はナルバレック様に会って、緊張しているのです。

 もっとも、あなた様に会って緊張しない人は居ないでしょうけどね」

  と後ろから声がかかる。ナルバレックが振り向いてみるとそこには小さい女の子──大体、身長が

 百四十五センチぐらいの白い巻き毛の子が立っていた。

  ジェシカと同じぐらいの年頃か。

  ナルバレックは漠然とそう考えていた。

  白い肌は北方系だろう。澄んだ青いひとみに赤い唇は対照的だ。先ほども言ったカールのかかった

 白い髪は彼女の可愛さと儚さを演出している。体型も年相応に見える。カソック姿から教会関係者だと

 思えるがナルバレックには見覚えが無かった。

  そういえばジェシカもさらわれた一人に入っていたな。

  ナルバレックがそう考えていると、

 「初めに一言申しますが、あたしはナルバレック様よりはるかに年上ですよ? まあ、位階の方は

 あなた様の方がはるかに上ですけどね」

  少し唇を尖らせて少女(?)は言った。ナルバレックは表情には出ないが驚愕している。

 「始めまして。聖歌騎士団所属のイリーナです。どうかリーナと呼んでください」

  その言葉に少し考えた後ナルバレックは、

 「イリーナ? 「剛剣」のリーナか。こんな小さい子とは……」

  今度こそ驚きの表情でナルバレックは呟いた。

  「剛剣」のリーナ。二メートルを超える全長の剣を軽々と自由自在に操ると聞く。女性とは聞いては

 いたがこんなにちんまりした子とは全く予想していなかった。

 「まあ、よい。リーナ。現状を説明しろ」

  ナルバレックは思考を切り替えてリーナに説明を求めた。

 「はい。バスの運転手及び付き添いの神父とシスターは血を吸われて全員殺されてます。血痕その他

 からバスに乗っていた子供たち五十六名はさらわれたと思います。生死は不明ですが、現場で殺さ

 れた形跡はありません」

  淡々と説明を続けるリーナ。この養護施設は魔の被害者たちの心のケアを目的としている。

 したがって、このような行事は結構頻繁に行われる。春のピクニック。夏の海水浴、秋の収穫祭など、

 さまざまな形で子供たちを楽しませて心を癒す。今回のスキーもその一環であった。

 一応、付き添いと護衛はついていたのだが今回のように魔の襲撃は初めてで、このようなケースは

 完全に想定していなかった。

 「犯人の目星は着いたのか」

  ナルバレックは横転したバスを見たあと、視線だけをリーナによこす。

 「いえ、まだです。これからという段階です。正直なところ現段階では見当もつかないというのが

 本音です」

  教会管理下とはいえ表向きは普通の養護施設。魔の被害者である孤児たちをさらってもほとんど利益

 が無い。逆に教会を敵に回すだけだ。それゆえにリーナたちは困惑している。

 「ふん。白翼公と血社に連絡をとれ。ここ数十年で成り上がった吸血鬼。それも会に属さないはぐれ者

 のリストアップをもらえ。それと、マフィア達にも連絡をとれ。縄張り内で活動している自分たちに属

 していない組織──幼児誘拐と幼児売春組織を中心に情報を貰え。すぐにだ」
 
  ナルバレックは汗を拭き拭きしているハゲ男に声をかけた。ハゲ男はすぐにナルバレックから離れ

 部下たちに命令している。それを見ながらリーナは、

 「どうしてそう思うのです、ナルバレック様」

  不思議そうに聞いた。

 「簡単なことだ。孤児である子を誘拐して利があるのは一つだけ。それにこれは自己顕示欲の現れだ。

 教会に喧嘩を売っている。そんな無謀な事をするのははぐれ者の若輩だ。血社に属する者はそんな無謀

 なことは出来ん。奴らは保身のみが命だからな。考えられる犯人像はそこそこ若くそこそこの力を

 持った吸血鬼。恐らく東欧あたりの紛争地帯で力を蓄えた奴だろう。西欧に進出し、そのアピールの

 ための行為。私はそう睨んでいる」

  ナルバレックの言葉にリーナは感嘆の声をあげる。

 「リーナといったな。今回の件。貴様に一任しよう。何かあれば逐一、私に報告しろ」

  ナルバレックはそう言うと振り返り、その場を去った。

  第四夜 ローマ。下町の雑居ビルにて

 
 「ナルバレック様の言うとおりでした」

  リーナはレポートを見ながら一緒の車に同乗しているナルバレックに話し掛けた。

  血社──吸血鬼たちの集まり。もっとも古く力ある吸血鬼集団。さまざまな血族が己を守るために

 集まり作り上げたネットワーク。それゆえに教会に喧嘩を売るようなスタンドプレーは許されない。

  リーナはレポートを見る。そこには眼鏡をかけた金髪の神経質そうな目をした男が写っている。

 「スラボンスキー。旧ユーゴ、クロアチアやスロベニアを拠点としていた吸血鬼です。麻薬、そして、
 
 幼児誘拐や人身売買を中心とした組織を作り上げてます。この頃はネットを通じてビデオ販売も……

 参考までに取り寄せて見ましたが──酷いものです。屈強な大人が数人がかりで七、八歳の少女や

 少年を陵辱して殺す──なんだか、男というのがケダモノ以下に見えました。吐き気がします」

  隣の席でゆっくり背もたれに体を預け、目を閉じていたナルバレックは、

 「そういう残虐性は男の特権ではない。むしろ、女性のほうが陰湿だ。ああいうビデオは女性も多く

 買っているし、そういうのに出演している女性も多く居る。加害側にな。私が見たのには少年と少女の

 内臓を生きながら切り裂きベットに敷く。その上で交あうというものだ。これを考えたのは女性。

 しかも普通の人間。魔ではない、ただの女性が製作したのだ」

  淡々とした口調で言った。その言葉にリーナは、

 「失礼しました。妙な先入観は禁物ですね。肝に銘じます」

  と謝った。

 「それより部隊の配置は済んでいるのか」

  ナルバレックは質問する。現在、二人はある雑居ビルに向かってる。そこがスラボンスキーと

 呼ばれる吸血鬼のアジトなのだ。

  今の時刻は昼。スラボンスキー程度の吸血鬼では日光に耐性が無い。ビルの形状から子供たちは

 分散して監禁されていると思われる。

  まずは頭を潰しかかるというのだ。

  ここまで、たったの二日でやり遂げたのだ。

 「失礼します……はい。なんですって? 分かりました。すぐに突入してください」

  リーナは自分の携帯が着信したので電話を取った。

 「どうした」
  
 ナルバレックが聞くと。

 「偵察隊からの報告です。スラボンスキーの一味は既に壊滅しているそうです。それに……ビル内に

 居た子供たちも虐殺されてます。すぐに部隊を突入させ、現状把握に努めました」

  リーナの報告にはナルバレックは表情を眉一つ動かさなかった。

 「そうか──おい、急げ」

  ナルバレックは静かに運転手に命令した。黒い高級車はさらにスピードを上げる。


 「酷いものですね──」

  リーナは現場を見渡していった。

  部屋の窓には厚いカーテンで覆われている。電気の明かりもかなり弱くしている。しかし、この薄

 暗い中でも現場の陰惨さは隠しようが無い。

  多くの死体がばらばらに転がっている。どいうわけか胴体が無く。頭と手と足だけが転がってる。

 壁、天井、床に至るまで赤いペンキの缶をぶちまけたように血で染まっている。

  ナルバレックを見る。

  ナルバレックは別室の子供たちが監禁していた部屋を眺めている。

  子供たちも同じように胴体が無く、虚ろな目の頭だけが転がっている。

  静かにナルバレックは戻ってきた。

  部屋の中央にスラボンスキーが奇跡的に生きているのだ。もっとも、胴体の半分がえぐれており

 復元呪詛も完全に働いておらず、

 「助けてくれー。殺してくれー」
  
  とうめいている。

 「おい」

  教会の騎士たちが厳重に取り囲む中、ナルバレックはしゃがみこみ、寝っころがってうめくスラボン

 スキーに話し掛けた。

 「殺してほしかったら私の質問に答えろ。いいな。まず、誰がこれを殺った。何が起きた。詳しく言え」

  ナルバレックはスラボンスキーの胴の傷口をつつき、質問する。

 「お願いだ。話すから殺してくれ……女だ。さらって来た女の子の目が金色になりこうなった」

  ナルバレックは感心したように、ほうっ。と言う

 「そいつの外見は」

  ナルバレックの簡潔な質問に、
 
 「栗色の長い髪の女だ。白いワンピースを着ていた。年は十五歳くらいで、ここから出るときに

 『エレイシア』と呟いていた……もう、いいだろう。早く殺してくれ」

  スラボンスキーの答えにナルバレックは表情を変えない。ただ、ポケットから小さな仮面を取り

 出した。

 「最後に質問しよう。お前は今まで血を吸ってきた相手を人として見ていたか。答えろ」

  ナルバレックは白い小さな仮面──少し口をあけて髭を生やした老人を模った物をスラボンスキーの

 指にちょうど仮面の口のところにはめて質問した。

 「──そっ、そうだ。もちろん人として見て……ぎゃー」

  スラボンスキーが少し躊躇して答えると同時に仮面の口が閉じる。指がはさまれて絶叫する。

 「ふん。真実の口の前に虚言は無効だ。おい、こいつをあの地下回廊に連れて行け」

  ナルバレックが仮面──真実の口をはずすと騎士たちに命令する。

  騎士たちはその命を聞き、スラボンスキーを拘束し連れて行く。

 「おい、話が違うじゃないか。殺してくれー。俺を殺してくれー。いやだ。いやだー。俺はあそこに

 行きたくない。頼む、コ・ロ・シ・テ・ク・レー」

  スラボンスキーは絶叫して暴れる。がっちり拘束されているのでじたばたする程度だ。

 「ふん。いやならば初めから教会に弓を引くな。貴様は死後、地獄の責め苦が待っている。だが、

 その前に現世で罪を償え」

  今代のナルバレックがなぜ「殺人狂」呼ばれるかはここにある。生かして捕らえた魔をすぐには

 殺さず、己の地下回廊に封じ込める。そこはまさに地獄の責め苦。清められた聖水に浸けられたまま

 にされる。薄い太陽光が動けない体に当たる。全身を串刺しにされるなど、すぐには殺さず永劫の

 苦痛が待っている。
  
  ナルバレックは裏の世界を知る客人によくここを案内する。回廊は苦痛のうめきと怨嗟の声に満ち

 溢れている。

  ここを訪れるものは皆、口をそろえて言う。

 「殺してやれ」

 「楽にしてやれ」

  ナルバレックは冷笑し答える。

 「こいつらの罪はその場で殺してやることで償えるのではない。犠牲者たちの無念のためにも現世で

 反省させるべきだ。安っぽい同情心は犠牲者たちに失礼だ」

  その轟然たる不遜な言葉に皆、鼻白む。答えを失うだけだ。

  ナルバレックは最低、週に一度はこの回廊を通る。そして冷然と微笑むという。

  ゆえに「殺人狂」と称される。

  怨嗟と苦痛の回廊を歩くナルバレックをこう呼ぶのだ。

 「……どういうことでしょう」

  リーナは不思議そうにくびを傾ける。

  狙いの相手が逆にさらった子供に返り討ちにされる。そんなことがあるのか。

 「……真祖の血統だ」

  ナルバレックは呟いた。

 「真祖? まさか。真祖は一人を残して滅んだはず」

  リーナの驚きの言葉に、

 「完全なる真祖。それは確かにアルクェイド・ブリュンスタッドしか存在してない。しかし、不完全な

 真祖はまだ世界中に生き残っている。死徒の姫、アルトルージュ・ブリュンスタッドは真祖と死徒の

 混血。日本にも高純度の真祖が現れたと聞いている。低純度の真祖はまだまだ存在するよ」

  ナルバレックは静かに言った。その顔は感情が無いのに怖い。

 「まさか──」

  リーナはナルバレックの言葉に驚愕し推論する。

 「私は子供たちのことは全員わかってる。誰が覚醒したのかもな。ジェシカ。お前も父と同じ道を歩む

 のか」
 
  ナルバレックはそれこそ血を吐くような言葉でうめいた。

 「もしかして、みんなを救いに──」

  リーナの慰めの言葉を即座に否定する。

 「違うな。あの部屋を見ろ。他の子達も惨殺している。あいつは完全に魔として覚醒したのだ」

  ナルバレックの指先にはジェシカに殺された子供たちの頭があった。うつろな目でこちらを見ている。 


  第五夜 ローマ郊外 とある倉庫街


 「それにしても──」

  ナルバレックと歩きながらリーナは疑問を口にする。

 「どうして、ジェシカは覚醒したのでしょう。どうして、他の子を惨殺したのでしょう。それに

 「エレイシア」とは。確か埋葬期間の第七司祭の本名ですよね。なにか関係があるのでしょうか」

  二人は今、分散して監禁された子供たちを救いに行っている。いくつも分散し監禁されているため

 教会の騎士達は手分けして救出に向かっている。ナルバレック達もその一つ、とある倉庫を目指

 している。その道中の会話だ。

 「そもそも、真祖の血統とは、かつて人と真祖の血が交じり合ったとき、その血が眠り、ある日、
 
 突然覚醒するものだ。その覚醒の衝撃で一気に血の衝動に目覚めるというのだ。そして、大抵は耐え

 切れずに発狂してしまう……ジェシカの父もそうだった。少しずつ気が狂い壊れていったよ」

  ナルバレックはジェシカと始めて会った頃に想いをはせる。

  ジェシカの父は作家だった。そこそこ売れていたがスランプに苦しんでいた。だからある雪山の

 ホテルで静かに執筆をすることにした。

  それが悲劇の始まりだった。

  己の中に眠る血に苦しみ、少しずつ覚醒し少しずつ壊れていた。

  ナルバレックがホテルに入った頃、ホテルの従業員、他の滞在客の全てを惨殺して血を吸い尽くし、

 実の娘に手をかけようとしていた。

  無残な光景だった。犠牲者約四十人は全て干乾びた死体だった。ジェシカの父の圧倒的な吸血衝動の

 恐ろしさが伺える。

 「でも、全ての覚醒した魔は発狂するわけではないんでしょう。実際、日本に現れた高純度の真祖は

 かなり理性的だと聞きますが」

  リーナの言葉にナルバレックは、

 「その通りだ。だが、既にジェシカは他の子を虐殺している。それがただの血の衝動の狂気の果て

 かはどうか知らぬがな」

  と静かに言った。

 「では、エレイシアとは。やはり日本に滞在中の第七司祭。でも、何の関係が……」

  リーナの疑問にナルバレックは答えた。

 「もう一人、エレイシアは居る。さらわれた子供たちの一人にエレイシアが居る。おそらくジェシカは

 そいつの方を指しているのだ」

  ジェシカはこの頃、ナルバレックにそっけない。そして、他の子や自分を睨んでいた。とくに

 エレイシアを睨んでいた気がする。ナルバレックはそんな気がした。


  エレイシア──埋葬機関第七司祭、シエルの本名。かつてシエルがロアになり自分の故郷を滅ぼした

 数少ない生き残り。

  ナルバレックは想う。シエルがかつての名を捨て洗礼名を授けられたときエレイシアに会わせた。


 「この子はエレイシアと名づけた。本名が分からぬのでお前の棄てた名を頂いた」

  ナルバレックがそう言うとシエルは口には出さなかったが憎悪の目でナルバレックを睨んだ。

 「このこは貴様が滅ぼした故郷の数少ない生き残りだ。シエル。お前はこの子にどんな償いをする

 つもりだ。この子は全てを失った。親も兄弟も故郷も全てを失った。さあ、シエル。どうやって償う。

  言っておくが死は償いにならん。貴様が死んでも償いにはならない。ならばどうする。考えろ。

 貴様がこの子に。いや、ここの施設全体の子にどのように償えばいいか考えろ。それまで私は貴様が

 死ぬことは許さん。死に向かうな。立ち向かえ。そのためにこの子をエレイシアと名づけたのだ」 

  ナルバレックの言葉にシエルは黙っていた。消して逃れられぬ不死の呪いに絶望していたシエルは

 じっと不安そうにナルバレックにしがみつくエレイシアを見ていた。 

  
  気のせいか、その日からシエルは変わったような気がする。


  絶望にうつし枯れ、己の殻に篭っていたシエルは外を見るようになった。血ヘドを吐くような訓練も

 必死に耐えてきた。子供たちの世話も見るようになった。


  あれから数年立つ。シエルは念願の不死の呪いから開放された。エレイシアも明るくなった。


  ………………。 


 「着きましたね」

  リーナがそう言う。二人の前にある倉庫が前にある。ここに子供たちが監禁されている。

 「カギを開けます」

  リーナは倉庫のドアに手をやる。少し念じるとドアのカギが開いた。

  ?

  ナルバレックは違和感を覚えた。リーナのカギ開けから魔力が感じられなかったのだ。

 「行きましょう」

  リーナは聖書を取り出すと静かに進んでいった。ナルバレックも後を着いて行った。

  

  ある部屋から男たちの下卑た笑い声が聞こえる。そこに集まっていると思い、静かに二人は行く。

  ドアを開けてみる。そこは壮絶な光景が広がっていた。

  さらわれた子供たちの一人の少女がテーブルの上に寝かされている。

  真っ裸にされて寝ている。

  十人くらいの男たちは取り囲み陵辱の限りを尽くしてた。

  少女の顔は大きく腫れ、全身が男たちの汚い液で汚されている。

  目は虚ろだ。

  絶望と苦痛の果てに少女は死んでいた。

  男たちは死してなお犯し汚していた。

  それを撮影していた。

  デジタルビデオで撮影していたのだ。

  部屋の隅には他の子供たちが居る。

  皆怯えている。

  男たちはそれを見て笑っているのだ。

  ナルバレックの頭は沸騰した。

  一瞬、怒りで我を忘れそうになる。

  だが、すぐに冷静になり対応しようとする。

 「なんだ、貴様らは」

  男の一人が問いかけ、もう一人がナルバレック達を見て卑猥な冗談を言った。

  限界だ。
  
  そう思ったのはリーナだ。

 「うおーーーー」

  リーナは聖書を開くとそこから剣の柄が出ている。それを握ると一気に引き出す。聖書が大きな

 剣になる。

  それを振るう。

  ぐしゃっ。

  二、三人の男たちの体が潰れる。そう、切り裂くというより叩き潰しているのだ。

  小柄なリーナの体で二メートルもある大剣を振るう。

  男たちは混乱し、パニックになる。

  うがぁー。

  ざくっ。

  また、男たちが引き裂かれる。

 「落ち着け、リーナ」

  ナルバレックの言葉は耳には入らない。

  リーナは剣を振るいつづける。

  だが、怒りに我を忘れているため隙が多い。

  ひいぃー。

  一人の男が取り出した拳銃の弾がリーナの頭を打ち抜く。

  軽い銃声とともにリーナの頭は破裂して倒れる。

  ほっと、男たちは息をついた。

 「ばかっ、よく見ろ」

  ナルバレックは叫ぶ。リーナは頭から血を流しながら起き上がり剣を振るう。

  男たちはさらにパニックになった。

  くっ、

  ナルバレックは懐から釘を取り出すと投擲する。

  鉄甲作用。

  教会独自の投擲術。

  カツッ。

  リーナも男たちも壁に文字どおり釘付けになる。

  なおも暴れるリーナ。

 「落ち着け」

  ナルバレックはリーナを容赦なく殴りつける。

  がくッとリーナの首が垂れる。気絶したようだ。

 「さてと、もはやお前たちは人ではない。その罪をたっぷりと償ってもらおう」

  ナルバレックは壮絶な笑みで振り返り壁に貼り付けにされてる男たちを見た。


                                            続く



 ユウヒツさんより頂きました第二話です。
 こういう風にナルバレックが描かれると言うのは恐らく初めて
なのではないでしょうか。心の優しさを、職務の仮面で覆い尽く
して冷厳と摂理を代行する埋葬機関長。
 彼女が血に堕ちたジェシカを目の当たりにした時、果たしてどう
するのか。先が非常に気になりますね。

 ユウヒツさん、ありがとうございました。第三話も楽しみにお待
ちしております。